夏の日の思ひ出【ドタバタ☆コンビ編】【前編】
文字数 7,480文字
長く険しい夢の旅にも、一時の休息を。
ユケイと翠は水の国の南西諸島にあるリゾート地を訪れていた。
ちょっとお高いホテルを拠点に、バスに揺られて話題のビーチへ!
夏の日差しを一心に受け、海はキラキラ☆気分はウキウキ!
2人はテンションMAXである。
8月も終わり頃だというのに、いやぁ~まだまだ夏日和だこと。
ビーチにも人がいっぱいですね。
ユケイ君、迷子にならない為にも急に走り出したら駄目ですよ?
ほーーい!
……ってそのセリフ、そっくりそのまま返すよん。
あらやだ。
なぁんですかぁ人の腰に縄ヒモなんて巻きつけてぇ。
翠はすーぐどっか行っちゃうから、こうして掴まえておくんだ。
今日はオレと遊びに来たんだから、誰と会っても喧嘩売りに行っちゃ駄目だよ?
いや~んユケイ君ったら束縛するタイプ~★
人聞きの悪いこと言わないで下さい?
去年はエミ☆ジキを退治せねばならなかったし、
一昨年はエリンさんとイ・ルハさんを花火で打ち上げずにはいられなかったんです。
リア充は爆発させねばならない。これは世界共通のお約束なんです。
そーやって去年も一昨年もオレのこと置いていったんじゃんか!
ぶーぶーのぶーなんだよ!!
はいはいも~それについては反省しております。
今年はそんな事ないですから。
ラブラブでアッツアツな一日を過ごしましょうね★
(投げキッス♡)
普通でいいんだよ普通で////
あんねあんね、オレねっ、今日のプランを考えてきたんだ!
ででーんっ!
(クマちゃんポーチからA4サイズのメモ登場)
あら。
昨晩は遅くまで一生懸命お絵描きしていたと思ったら、
今日の予定を考えていたんですね?
えっへへ~、発表します!
まず海についたらやること。
その1、ビーチボールを膨らます。
その2、海で遊ぶ。
その3、砂浜でお山とか作る。
その4、ちょっと休憩して日向ぼっこする。
……お昼になるまではこんな感じなんだ!
ちょっ……この予定表、
ホテルに帰って寝るまで書いてあるじゃないですか(笑)
んも~相当楽しみにしていたんですね?
Σ ウッ……!
(やれやれ……翠ちゃんはアウトレットモールに行きたかったんですけど、
こんな眩しい笑顔を見せられちゃあ……ねぇ?!)
わかりましたよ。
デートプランは任せますから、英国紳士らしくエスコートして下さい?
縄で引っ張るんじゃなくてね。
おっけー……
(縄をほどく)
それじゃあ行動開始だよ!
えいえい、おー!\(^o^)/
ぱんぱんに膨れたビーチボールを抱え、ユケイと翠は駆けだした。
青い海は澄んでいて、水の底までよく見える。
キャッキャ★ウフフとはしゃぐ度、きらきら輝く水しぶき。
その後は浜辺で砂遊びをして、打ち寄せる波と戦ったり、
カニに指を挟まれたり、綺麗な貝殻を集めたり、
長い海藻を頭に乗せてロン毛ごっこを楽しんだりした。
パラソルの下で休憩しながら、ユケイが次のプランを話す。
(A4メモをとり出す)
えっとぉ……ちょっと早いけど、これからお昼ご飯にするんだよ。
あんね、今から行くのがポイントなんだ!
もう少し遅らせたらお店が混んじゃうかもだから!
お昼のピークタイムを避けるんですね?
案外ちゃんと考えられているんですねぇ(笑)
ユケイ君はなに食べたいの~?
どこ行ってもそれなんだから。
ならサイドメニューにイカ焼きがある定食屋でも探しますかね!
やったやったー!!
午後もたくさん遊ぶために、いっぱいいっぱい食べるんだよ!
(小躍り)
はーいはい、何でも好きなの頼んでいいですからね!
お店ではお行儀よくするんですよ?
ユケイと翠は海岸沿いの飲食店街を歩き、テラスのある定食屋に入った。
注文を済ませ、ウッドデッキの席へ。
心地よい潮風が通るその場所からは、ビーチの様子が一望できた。
やがて運ばれてきたのは、焼きそばとイカ焼きと、
キンキンに冷えたソーダラムネ。
食後にはバニラアイス。
翠は指で氷水をかき混ぜながら、ユケイの食べっぷりを微笑ましく見守っていた。
めっちゃおいし~!!
ねぇねぇアイスおかわりしてもいい?
チョコアイスも食べたいんだ!!
大丈夫だよ、この後いっぱい動くからねん。
じゃあ午後の予定を発表するよ!
(A4メモ登場)
ご飯を食べ終わったらやること、その1 ーー…
【スー】:竜族三姉妹の長女
はぁ……
万姫ったら、どうして私を誘ってくれなかったの?
どうしてあんな男と一緒にいるの??
どうして……どうして……。
(透視能力で監視中)
【ミー】:竜族三姉妹の次女
……どうかお気を確かに。
風輝様が姉様を避けるはずがありません。
きっと何かお考えがあるのでしょう。
……………………多分。
【リー】:竜族三姉妹の三女
そーだよぉ!
せっかく海に来たんだから、美味しいものでも食べて気分盛り上げてこ!
イエーイ!\(^-^)/
い、いぇー……;\(^-^;)/
(な、なんですかこのドス黒いオーラは……;
おや、確かあいつは…………)
ダメ……厄災の黒蛇になっちゃいそう(ズーン)
……私はこんなにも辛いのに、どうして楽しそうにしているの?
許せない……! あぁ……そうだ。
二人はこれから遊覧船に乗るみたいだから、大波を起こして転覆させちゃおう。
泳げない万姫、何もできないヤグール。
そこへ私が駆けつけて、颯爽と万姫を救うの♪
そしたら万姫もあいつより私といる方が安心だって分かるはず。
どう、お前達? いいアイディアでしょう?
し、しかし……沖合いには今日も多くの船がでているようです。
それらも巻き込むおつもりですか……?
んでね、その後はボート屋さんに行ってボートを借りて、
沖で釣りをしたり、周辺を探検したりして~……
(↑ 読むのに夢中)
……!!
ちょっとぉ~そこの御三方。
相方と上手くいってないからって、黒いオーラ放つのやめてくれませ~ん?
食事が不味くなるってもんです。
(ピクッ)
……なぁに~??
あぁ、誰かと思えば私に負けた鉄扇使いの方。
ごめんね、今は貴女に構ってあげる気分じゃないの。
それ以前に私、男と雑魚には興味がないの。
(ピクピクッ)
い~やいやいや負けた覚えありませんけど。
最終的に敵前逃亡したのはそちらでは?
ともかく、貴女のくっっっだらない企みを聞いてしまったからには黙っていられないんですよ。
あれは逃亡じゃない。戦略的撤退。
退くのも兵法のひとつだよ?
うーん……貴女のような人にはきちんと決着をつけて、
身の程をわからせてあげないとダメなのかな?
挑むところです。
水辺は私の得意舞台ですから、
こっちの予定に支障もないくらい早く終わらせてやりま…………Σ うぷ?!
あーもーなんですか!? ……ん?
『美女コンテスト』……?
開催は今日このビーチで、優勝者には100万円分の旅行券……?
…ーー って感じなんだ(* ´ ▽ ` *)
ほーん? 聞いてた?
聞いてましたよ!
午後は美女コンテストに参加する!!
スーさん、これで勝負です!!!!
は、はぁぁ……⁉
なにそれ、大衆の色目に晒されるなんて絶対にいや!;
おんやぁ~~逃げるんですかぁ?
まぁこのセクシー&ダイナマイト&ミラクルビューティフォーな翠ちゃんを前にしては、自信をなくすのも無理ないですかね~。
じゃ~竜族ならではの野生~的やり方に合わせまして、美しくない暴力勝負といきますかねぇぇぇ~。
なんなのこの女ぁ……!!!!
(わなわな)
……いいよ。
絶対に私が優勝して、貴女のその自尊心をズタズタに打ち砕いてあげる。
そして100万円分の旅行券を万姫にプレゼントして、二人だけのバカンスに行くんだから♡
待って……!
これはスー姉様にとってよいガス抜きになるやもしれない……。
なに言ってんだよ翠~~~~!!!!
午後はボートで釣りをするんだよ~~?!
ボートを借りるやら釣り道具を揃えるやら、
今日の手持ちでは足りないので私が旅行券を手に入れて換金してきてあげます!
(キリッ)
駄目~~っ!!
お金足りないなら素潜りっていうプランBもあるからぁ!
なるほどでは会場に向かいますか!!
(火花バチバチ)
大恥かいたって知らないんだから!!
(火花バチバチ)
ゼロ距離で睨み合いながら、翠とスーは美女コンテストの会場へと猛進してゆく。
……なにやら大変なことになってしまいましたが、
優勝賞品が手に入ればきっと姉様も矛を納めて下さるに違いない。
リー、私達も加勢しますよ。風輝様にもこの事をお伝えせねば……!
了解~。
じゃあ、あたしはその辺の同胞達に姉様に投票するよう《《声》》を届けてみるよ!
スー姉様の美貌と身内票があれば、優勝なんて余裕だよねっ!
竜族の三姉妹とともに、翠はお勘定を置いて行ってしまうのだった。
混みはじめてきた店内にひとり。
ユケイは予定表を握りしめ、運ばれてきたチョコアイスを見下ろしていた。
むむむのむ~、なんだよ……。
(翠って、オレといるの嫌なのかなぁ……)
――『美女コンテスト』
その特設会場はビーチサイドの開けた場所にドドン☆と構えられていた。
花や風船で飾られた華やかなステージ。
その裏方では、参加者が各々気合いを入れている。
浜辺を行き交うビーチ客も、投票用紙を配られては面白そうだと足を止めた。
人だかりは規模を増してゆき、
開催時間となる頃にはビーチの一大注目イベントとなっていた。
開催を告げる音楽とともに司会の男がステージに立った。
握ったマイクに小指を立て、やけくそ混じりに声をはる。
さあさあやって参りました!
夏だ☆水着だ☆美女コンテストだぁ~!?
司会進行役はまさかのわたくしぃ。
日雇いバイトでお勤めします、トミーで御座いますぅ~!
(はぁ、なんでこんな役回りばっかり……)
ユケイはほっぺをぱんぱんに膨らませ、人だかりをかきわけて観客の最前列にでた。
投票用紙を握りしめ、翠はどこかとキョロキョロ見渡す。
今から総勢52名の美女!達が、番号札を掲げて入場致します!
もしもビビっときましたら、
お手元の投票用紙に番号を記入して回収ボックスまでお持ち下さい!
その際に、決勝戦の投票用紙を受けとるのを忘れずに!
決勝戦の投票用紙は半券になっておりまして、
投票して下さった方の中からも抽選で10万円分の旅行券が当たりますので、
奮ってご参加下さいねぇ~!(裏声)
えー!? 決勝とかもあるの!?
なんだか時間かかりそう……。
ぜってー翠には投票しないよーっだ。
それでは予選を行いまぁす!
より多くの票を獲得した上位5名が決勝戦に進出します!
ではでは~美女コンテスト☆スタートぉ~!!
明るい音楽とともに美女!達の入場がはじまった。
番号札をつけた若い女性達が一人ずつステージにあがり、
お立ち台の上で短いアピールをする。
ユケイはとりあえず自分のタイプに近い26番に投票した。
代わる代わる美女がゆき、最後になってようやく翠を見つけた。
翠は51番、スーは52番。
二人の番号札だけ即席の紙だったことから、参加者の定員が50人のところ無理を言って飛び入りしたんだろうなぁ…、
とユケイは思った。
アピールタイムが終わり、
52人の美女!がステージに並んだ。投票タイムだ。
人ごみにもまれながらユケイも回収ボックスへ向かうと、
ふとした拍子に誰かの足を踏んでしまった。
ぐわしとクセ毛を掴まれて、ユケイは肩を強張らせた。
どこ見てやがル。気をつけナ……!
って、うわ! 赤い化け物!
(指差し)
お前らなんでこんなところに!
さては悪いこと企んでるなー!?
なぁにただのバカンスだヨ。
悪党にも休日が必要なのサ。
そう言うアンタこそ、こんな催しに興味があるなんてませたガキだネ~~。
ちっ、違うよ!////
オレは翠と遊びに来てたんだけど、翠が竜族のおねいさんと喧嘩して、
美女コンテストで勝負だとか言いだして今に至るんだ……。
(げんなり)
ははーん、なるほどネ。
男嫌いのスーが美女コンテストに出るだなんておかしいと思ったんだヨ。
つまりお前んとこの道化がうちのスーをたぶらかしたってわけダ。
それで風輝様はスー姉様を案じて馳せ参じて下さったのです。
お前は黙ってナ。あと、風輝様って呼ぶのをやめてもらおうカ。
今は千人斬りの万姫でやってんダ!
さぁて……アタシはスーに投票すル。
なにを張り合ってんだか知らないけど、あの道化女に負けるのだけは許さなイ!
邪魔するなら容赦しないヨ……!
邪魔だなんて……。
むしろオレは翠に予選で敗退してもらいたいくらいだよん。
おーい、お前らいつまで立ち話してんだ?
投票時間が終わっちまうぞー。
っと、いけなイ。
ヤグール、アンタももちろんスーに入れたネ?
投票が終わり、ほどなくして予選の結果が発表された!!
大変お待たせ致しましたぁ!
決勝戦に進出となりますのはこちら!!
番号を呼ばれた方は一歩前へお願いしますぅ~!
5位……2番!
4位……28番!
3位……40番!
2位……51番!
翠は顎を高くして、未だ番号のあがらないスーをふふん♪と鼻で笑った。
そしてガクーンとなっているユケイを見つけて投げキッスを送る。
なんとなんとっ、
2位に圧倒的な票差をつけて予選堂々の1位に輝いたのは~~
52番っ!
52番の美女!ですぅ~!
わあっと会場が盛り上がる。
スーは困った笑みを浮かべながらもうふふ♪と翠を見下ろした。
万姫はよしよしと頷き、
ミーとリーはほっと胸を撫で下ろした。
ヤグールは通りすがりの美女にデレデレ。
落選した美女!達がステージを降り、コンテストは決勝戦を迎えた。
五人の美女!が一列に並び、一人ずつ自己紹介を行ってゆく。
番号順に三人目が終わり、翠の番がやってきた。
翠は多くの注目を浴びて得意げにマイクをとった。
水の国サーメリアからやって来ました★
翠ちゃん♡って呼んで下さい★
好きな食べ物はふわっふわのシュークリーム★
趣味は可愛いもの集め★
特技はお料理★
将来の夢は、素敵なお嫁さんになること★
彼氏募集中でーすっ★
しらけるユケイをよそに、
前の三人より力強い拍手が鳴り響いた。
おぉ見ろ。
オレが投票した51番ちゃんが予選通過してやんの。
オレって女を見るセンスあるだろ~?
ハン!!!!
……ったく、どうして男共はああいうのが好きなんだろうネ?!
万姫がイライラするなか、最後の候補者であるスーの番になった。
スーは上品に頬を赤らめながら、うるうるとした伏し目で語る。
先の投票ではありがとう御座いました。この場に立てたのは皆さんのおかげです。
(ぺこり)
もしも優勝できたなら、100万円分の旅行券は私の大切な人に贈りたいと思います。
翠より激しい拍手の嵐。指笛がいつまでも飛び交うなか、スーは照れくさそうにお立ち台を降りた。
にっしてもスーのやつ、20代相手に全然見劣りしてないじゃン。
さすがだネ~。
確か今年で449歳だから、人間でいうと40代半ばだネ。
ま、この感じを見るにスーの優勝は堅いネ。
はやくあの道化が悔しがる姿を拝みたいヨ。クククッ!
おい赤い化け物、アンタももちろんスーに入れるネ?
(首根っこ掴み)
えっ……;
オレはどっちにも入れないんだ。
どっちかが勝ったらまた喧嘩になっちゃうと思うし……。
逆だヨ! 勝敗が別れるから喧嘩が終わるんじゃなイ。
書かないってんならその投票用紙をよこしナ!
アタシが有効活用してやル!
やだあ!
っていうか身内票なんて卑怯だぞ!
ずるっこで勝って嬉しいのー!?
勝ちゃあいいんだよ勝ちゃア!
世の中結果が全てなんだヨ!
とっととよこしナ!
投票タイムのその前にぃ!
ここでまさかまさかの、飛び入り参加者の出現だあ~!?
聞いて驚くなかれ。ななななんとあのっ、
世界に名高い竜族の歌姫・アルテミシアさんの登場ですぅ~~!!!!
(裏声)
六人目の美女!として現れたのは、
美しい水着ドレスをまとった歌姫アルテミシア。
会場が沸きあがるなか、
翠とスーだけがポカーン( ・д・)としていた。
皆さんこんにちは。
飛び入りながら素敵な催しに参加させて頂き、大変嬉しく思います。
(微笑み)
お立ち台から放たれる圧倒的なオーラは、
ユケイと万姫だけでなく全ての観客の注目を奪い、
コンテストに興味がなかった通行人まで引き寄せた。
万姫もファンだったのか、
ヤグールを押しのけ感極まった様子で激しく手を振る。
その隙に、ユケイは投票用紙を取り返した。
この場に感謝し、わたくしから一曲披露させて頂きます。
皆さまがよい夏を過ごせますよう、心を込めて歌いますね。
アルテミシアがマイクを取ると、会場はもはやコンサートと化した。
聞いた者の情緒を操るその歌声で、
アルテミシアはみんなを『幸せな気分』にさせた。
歌姫がお立ち台を降りた後にも大喝采がやむことがない。
さあ! それでは投票タイムとなりますぅ!!
六人の中から選ばれるのは誰だあ~~っ!?
やけくそ声が快晴に響くと、人々は競うようにして回収ボックスに押し寄せた。
あぼーんとなる翠。
ごくりと生唾をのむスー。
にこやかに手を振るアルテミシア。
ユケイも投票用紙を握りしめ、回収ボックスへと走った。
果たして、美女コンテストの行方は ――!?
【後編】へ続く!!
(ドコドンッ!!)
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