みんなで行こう!温泉旅行!【前編】

文字数 3,430文字

―― よく晴れた冬の日のこと。

ユケイと翠は水の国の繁華街を訪れていた。

長旅に必要なあれやこれやを新調するためである。


おしゃれな店が立ち並ぶ大通り。

2人はしっかり手を繋ぎ、人混みの中をかき分けて、大規模なデパートにやって来た。

広告の横断幕が風に揺れ、一帯には愉快な音楽が流れていた。


ユケイはそれをぽかんと見上げ、

館内に入ってからはキョロキョロうろちょろ。

ショーウィンドウに駆け寄っては目を輝かせていた。


そんな様子にキュンキュンしつつ、

翠は平静を装い後を追う。




※温泉の魔法(?)で何故か身バレはしません※
待って下さ~い。迷子になりますよ~。

何はしゃいでるんですか~?

はしゃいでないよ!

オレ、はしゃいでなんかないんだよん!

(ぴょんぴょんぴょん)

さーて、今日は色々と買うものがありますよ。

ユケイ君、翠ちゃんの買い物メモ(A4用紙)を読み上げてもらえますか?

おっけー。

歯磨きセット。タオル。下着。着替えを入れる袋。

水筒。筆記用具と色鉛筆。自由帳。飴やクッキーなどのお菓子!

おんや~~~?

なにか抜かしてないですか~~~????

学習ドリルをいくつか~……。
よろしい!

では各売り場をまわっていきますのでね、迷子にならないでくださいよ!

ふぁ~~~~い。

メモを片手に各階へ。


誰かがストリートピアノを弾いていたり、壁が水族館のようになっている場所があったりと、

時には見物しながら館内をまわってゆく。


一式買い揃えてみると、なにやら青色ばかりが目立った。

もしかして青が好き?
あのね、えっとね、

オレ、青とか白とかが好きなんだ~!

ふふ。そんなに翠ちゃんカラーが好きですか~/////
別に翠を意識してるわけじゃないっ。

なんていうか、オレは魂の色がブルーだから、無性に青色に惹かれてしまうのさ。

魂がブルーの人が青色を身に着けると勉強運が上がるんだよ。

どんどん知的になるオレ。……フ。

また変なスピリチュアル番組の影響ですかねぇ~~??

お夕食も買い込んで、

お買い物を堪能すること半日。


そろそろ帰ろうかといった矢先、なにやら長蛇の行列があった。

興味に誘われ辿ってみると、それは何かのイベントに際したくじ引きだった。


レシートを合算し、所定の金額につき一回引けるというもの。

当たりは3種類。

【3等】は商品券。

【2等】はグルメギフト。

そして【1等】は、超高級旅館で楽しむ温泉旅行の宿泊券だ。


帰る前の一興。翠は主人公の運を試してみたくなった。

くじ引きと聞いてユケイもやる気満々。


前列の子供がハズレのティッシュを受けとり、いよいよユケイの番がきた。


挑戦権は3回。

翠は応援を装いながら、内心では2回連続でハズレ、3回目で何かしらの景品が当たるだろうと予想していた。

なにせ主人公だし。


ガラガラのなかで波打つ出玉。

ユケイは慎重にハンドルをまわす。

2個目のティッシュを小脇に抱え、最後の1回には青い魂の念を込める!!


その真剣すぎる横顔に翠は笑いを堪えていた。


受け皿に落ちる黄金の玉。

大当たりの鐘が鳴り響き、並んでいる人達をざわつかせた。


翠の予想は的中し、やはり主人公は【1等】を当ててしまうのだった。

ほーん! 

ほーん? 

ほへほーーん!?

(ぴょんぴょんぴょん)

やりましたね。

ユケイ君、おめでとう!

やはりこの世界はユケイ君を中心に回っている様です。


超高級旅館の宿泊券とパンフレット、

その一式が進呈され、温かい拍手に包まれた。

見たか、オレの強運パワーを。

もつものもってる男だぜい!

……惚れちゃった!?

はーいはいはい。

宿に戻ってじっくり見てみましょ!

うんっ!

戻ったら開封式をやるよ!

オレが最初に開けるんだから、翠は開けちゃ駄目だよー?


ユケイと翠は宿泊中の宿に戻り、新調したものを荷物に収めた。




そしてお待ちかね。

ユケイによる開封式のもと、

【1等】の景品である宿泊券とパンフレットがテーブルに広げられた。

え~なになに?

風の国ウィンティカの高級旅館で、ここの露天風呂は絶景みたいですねぇ。

あらやだ。お部屋も素敵でお食事も超豪華!

リラクゼーションやアミューズメントも充実!

んま~~~~~~生意気★

ひゃっほ~~~!!

ねぇねぇ絶対行くでしょこれは!

行くっきゃないでしょ~~!? 

あっ、この宿泊券……10名様までご招待だって!

みんなを誘って、団体客のお通りだよっ!

はい!?

みんなって、誰を誘うつもりです!?;

えっとえっとぉ……

オレと、翠と、リズと、シバと、イナフでしょ~?

エミエルとジギも誘うし、竜族の研究員の2人も!

あとの1人はぁー……

おまち!

なにも10名埋める必要はないんですよ?

そんなカオスな組み合わせで旅行なんて、果たして楽しいんですかねぇ??

きっと楽しいよ!

オレと翠のブルーパワーがあれば、なんでも楽しくなるんだよ!

まぁ、くじを当てたのはキミですし?

この宿泊券10枚の使い道は委ねますけど、はてさてどうなる事やら……。

よーーっし!

オレ、さっそく配りに行ってくる!

HEYおまち!!

1枚配るごとに、ドリル2ページ追加ね。

そもそも前提条件としてね、お勉強頑張ったら連れていってあげます。

うんわ~……ここぞとばかりに。

仕方ないなぁ。勉強も頑張るマンになるよ……!

……期間限定で。

聞こえてますよ。

期間限定ってなんですか~~?


あっこら、待ちなさーい!

ユケイは宿泊券を握りしめ、

温泉旅行に誘うべく、みんなに会いにゆくのだった!

……と、いうことなんだ!

一緒に冬の温泉旅行に行こうよ!

へっ。

こんなおいしい話、

ダダでいけるってんなら付き合ってやる。

(わくわく)

…………♪

ん~……誘ってくれて嬉しいよ。

美味しいご飯にふかふかのベッドかぁ。

楽しみだなぁ。

リオの管理者として、同行させて頂きます。

(やったぁ//// リオと旅行だわ!////)

イブキさんが行くなら、ボクも行かなきゃだね。

(おっしゃあ//// イブキさんと旅行だぁ!////)

旅行の誘いは好感触!


ユケイは嬉しくなって楽しくなって、その勢いで魔界へ赴き、

魔王ジギにも宿泊券を差し出した。

温泉旅行!

一緒に如何ですかー!

温泉……! 豪華な食事……!

リラクゼーション施設ッ……!

こ、これは是非とも行きたいぜェェ。

行きたいが……いくつか質問がある。

ほーん?

なになに?

……エミエルは同行可能か?

その場合、食事は考慮してもらえるか……?

エミエルはその、菜食主義なんだが……。

えっ! エミエルってベジタリアンだったの?? めっちゃ意外!

……えーっとえっとぉ。

それについてはパンフレットに書いてあるみたいだね!

『事前に連絡を下されば、お食事はご信念や宗教を考慮することも可能です』

だってさ! さすがは高級旅館。

……そうか。

これは宗教でも好き嫌いでもない、少々複雑な問題でなァ……対応してもらえるならありがたい。

無精卵と蜂蜜はいいが、肉と魚と牛乳は駄目だと伝えておいてくれ。


エミエルにはオレ様から話を通しておこう。当日を楽しみにしているぜェ……。

おっけー!

草食竜のイナフもいるし、きっと大丈夫だと思うんだ。

また連絡するよーん!

(手振り)

そして、宿泊券の最後の一枚は、

豪華客船にて共に窮地を乗り越えた、アルテミシアの弟であるエルクに送るのだった

やっほーエルク!

一緒に温泉旅行は如何かなーん?

わわっ、ユケイ!?

相変わらず、キミはなんでも突然だね(笑)

でも、嬉しいよ。ボクなんかを誘ってくれてありがとう……!

アルテミシア姉さんもきっと許してくれると思う。是非、ご一緒させて下さい。

誘うのはとーぜんだよ!

だってオレとエルクはボーイフレンドだからね!

じゃあまた連絡するよ! 当日を楽しみにねーん♪

(去)

うん? ボーイフレンド……????

聞き違いかなぁ。

それよりユケイとお出かけだ。

ふふっ、楽しみだなぁ……♪

奔走すること西東(にしひがし)

宿泊券を配り終え、

ユケイは意気揚々と宿屋に戻った。
たっだいま~~!!

みんな来るってさー!

なんだか楽しくなりそうなんだよ。

おかえり。

お疲れ様でしたね。

それでは今日のドリル、16ページ分をハイどうぞ。

(勉強セットどーーーん!!)

うぐぐぐぐ……;

やるっきゃない。

やるっきゃないんだよ……。

えー10人分、でしたっけね。

今から翠ちゃんが予約をとってあげますから、お勉強頑張って下さいな。

ふぁ~い…………。


当日に想いを馳せながら、ユケイは机にかじりつき筆勉を走らせる。


果たして、

このカオスな10名の団体客は、

何事もなく温泉旅行を楽しむ事ができるのだろうか!?



【中編】へ続く!

(ドコドンッ!!)

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【 ユケイ 】

CRYSTAK CROSSの主人公。

ひょんな事から7つのクリスタルに封じられた記憶を取り戻すべく、翠と一緒に頑張る10歳児。

口癖は「ほーん」「~なんだよ」「~だよん」。

お化けが怖くて夜一人でトイレにいけない。

同年代や年下の前では頼もしいが、年上相手には甘えん坊になってしまう。

必殺技に変な名前をつけがち。

現実世界:エディ・ウィローシュ(10歳)

【 翠《すい》】

水のクリスタル所持者

ユケイ君が可愛すぎて毎日がハッピー☆

他のクリスタル所持者達を裏切りユケイの味方をしているが、色々とヒミツだらけ。

その姿はクリスタルの能力によってできた水の分身体であり、本体の所在は不明。

本の世界のルールについて、なにかと詳しいようだが……?

【 シバ 】

ユケイを利用して成り上がった、海賊船の船長。

銃の腕は超一流。

現実世界:シルヴァ・アディントン(16歳)

【 リズ】

無口で謎の多い竜族の女の子。

ユケイに執着しており、どこまでも追いかけてくる。

現実世界:リズリット・ローリー(10歳)

【イナフ】

竜族の研究所に囚われていた竜族の青年。

ユケイと共に研究所からの脱出を試みる。

身のこなしが素早く、足技が得意。

現実世界:イアン・ハイアット(16歳)

【エミエル】

光のクリスタル所持者

竜界の覇者であり、竜族達を束ねる王。

少女の姿をしているが2000年以上生きており、その正体は巨大な竜である。

魔王ジギとは仲良しこよし同盟を結んでいる。

好きな食べ物は苺。水が苦手で風呂嫌い。

【 ジギ 】

闇のクリスタル所持者

魔界の支配者であり、魔族達を従えている王。

闇の魔法を操る魔法使い。気付いたらエミエルのお世話を焼いている。

見た目の雰囲気に反して、可愛い小物やお菓子作りや裁縫が好き。

キュンは1日3度まで。4度目は死(?)に至る。

万姫《ワンヂェン》

三大海賊団『ネヴァサ』の船長がひとり。

千人斬りの異名を持つ。

元は風の国の第一皇女。全ては敬愛するボスの為に。

現実世界:王・深緑(ワン・シェンリュ)(17歳)

ヤグール

三大海賊団『ネヴァサ』の船長がひとり。

魔獣使いの異名を持つ。

万姫を気にかけている。

現実世界:ヤーコフ・スミス(44歳)

バル・ムワ

三大海賊団『ネヴァサ』の船長がひとり。

強欲の王の異名を持つ。

スー

竜族三姉妹の長女。

万姫のお世をしている竜族。

透視や近い未来を予言する能力をもっている。

現実世界:王・思颖(ワン・スーイン)(42歳)

【イルヴァ】

竜族の王国を守護する白薔薇騎士団の団長。

エミエルに絶対の忠誠を誓っている。

三度の飯よりイナフのことが好き。

超泣き虫。

現実世界:オリヴァー・イェリデン(15歳)

【 ラダリェオ 】

類まれな戦闘の才を持っているが、

残酷なことが嫌いな変わり者のロゴドランデス族。

セスとイナフにはめっぽう弱い。

わりとツンデレ。

現実世界:ランドルフ・ハイアット(38歳)

【 エバ 

人間界に生まれ竜界で育った、

砂漠に住まう力自慢の竜族。

マイブームはラダリェオと戦うこと。

現実世界:エマ・アシュバートン(36歳)

【 レヴァン 

砂漠出身の、力自慢の竜族。

白薔薇騎士団の副隊長。

元反王国派だったが、今はエミエルに忠誠を誓っている。

好戦的で猪突猛進。

なにかとイルヴァにつっかかる。

現実世界:レオン・タイラー(15歳)

【 エルク 

竜族の歌姫・アルテミシアの弟。

歌声に特殊能力を持ち、聞いた者の状態を操る。

豪華客船にて、窮地のところをユケイに救われ、固い友情が結ばれた。

リズとも仲良し。

現実世界:エリック・アンダーソン(10歳)

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色