第7話 「しおり」

文字数 1,087文字

── 17:30 昇降口 ──
雛川は香奈に近づき耳元で秘密を言った。

次の瞬間、雛川の秘密に驚いた香奈は言葉を失う──。

俺は…

この本から飛び出してきたんだ…


妹である、お前を助けに…

えーっと、ドッキリとかですか!?

冗談ですよね…?

嘘じゃない…
ちょっと待ってくださいね…

頭の整理が…


そもそも、本から飛び出したって…なんの本ですか!?

雛川は手に持っている本【四つ葉のしおり】3巻を香奈に見せた。
これ!

前に大事な本って言ったよな…


この本から出てきた…

ウチを助けるって…

一体、どういう事ですか!?

お前は、今年中に死ぬ…
香奈は突然言われた雛川の話に驚く。

それでも冷静に話を続ける──。

今年って…

なにを根拠に…

まぁ、今はまだ知らない方がいいだろ…

いつか話す…

戸惑いを隠せない香奈は、

ただその場に立ち尽くすしかなかった。

雛川は香奈の様子を見た後、そっと昇降口を去っていく──。

香奈は去っていく雛川の左腕の袖を掴む。

香奈はブレザーの左ポケットから雛川の”あじさい柄のしおり”を渡した。

そっと振り返る雛川は右手を差し伸ばし、しおりを受け取る。

これ…

落としましたよね…

おおっ…

サンキュー!


無くしたと思ってたから見つかって良かった…

雛川は”あじさい柄のしおり”をブレザーの右ポケットにしまい、

カバンから香奈の”四つ葉のクローバーのしおり”が挟んであった本を渡した。

お前も、これ置き忘れてたぞ…
香奈はそっと手を差し伸ばし本を受け取る。
あっ…

ありがとうございます…

じゃぁな…

図書室でまた会おう!

雛川は傘をさして校舎を出る──。

下を向いて四つ葉のクローバーのしおりを見つめる香奈。


泣くほど好きだったのに…
── 21:00 香奈の家 ──
香奈はベットの上でスマホをいじっている。

画面には雛川について話している美穂とのLINEのやりとりがうつっている。

雛川さんにあじさいのしおりを返したよ!
ちゃんと直接返せてよかったね!

んで、告白はしたんでしょうね…!?

したよ…

けど、振られちゃった…

そっか…

やっぱ彼女いたんだね…

でも、諦めちゃ絶対ダメだよ!

う〜ん…

彼女いるかまではわからなかった…

けど、ウチと先輩は付き合っちゃいけない存在なのかも…

好きな気持ちは変わらないけどね…

また明日、学校で詳しく聞かせて!

いろいろ相談のるよ!

ほら…私、生徒会の委員だし!

ありがとっ!

てか生徒会、主張しすぎ!!!

香奈は電気を消して寝ようとする。
ウチはこのまま雛川さんの事を好きでいていいのか…

実は妹だったなんてまだ信じられない。

そして雛川が大切にしている本ってどんな本なのか気になる…

香奈は目をつぶりながらいろいろと考える──。


つづく
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登場人物紹介

本が大好きで不器用な性格の高校二年生「桃井 香奈(ももい かな)」

突如、図書委員に任命される。

図書室でミステリー小説を毎回借りにくる先輩「雛川 海斗(ひなかわ かいと)」

おとなしい性格で真面目だ。

彼には『とある秘密』がある──。

去年の冬に転校してきた女の子「冴島 美穂(さえじま みほ)」 

今年、桃井香奈と同じクラスになり生徒会をしている。

好奇心旺盛でちょっぴり天然な子

桃井香奈と同じクラスで担任の先生をしている。

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