第13話 「帰り道」
文字数 852文字
小太りの男性は図書室を後にした──。
香奈と図書委員長の荒川雫は本棚の前で話している。
先輩！
ありがとうございます！！！
うんうん！
それより怪我はない？
はい！
大丈夫です！
にしても、あの人は一体…
あの人…
確か別のクラスに在籍してた気が…
── 18:00 昇降口 ──
香奈はカバンを肩にかけ、昇降口へ。
すると、トランペットが入ったケースを担ぎながら守がやってきた。
おう！
桃井じゃねーか！
あっ…
記憶が戻っていないから、自己紹介するけど…
俺の名前は守！ 菊場 守（きくば まもる）だ！
お前とは幼稚園の時からの幼馴染だ！
菊場くんっていうのね！
よろしく！
幼馴染なのに桃井って苗字で呼んでいるんだね！ あんまり仲良くなかったの？
えっ、あっ…まぁ…
お前が事故にあってから数日したら親の転勤で中学卒業まで地元離れててさ…
それっきり全然話さなくて、距離感がわからなくなったんだよね…
そうだったんだ…
2人は靴に履き替えて学校を出る。
家が同じ方向ということもあって一緒に帰っている。
お前…
小学校の時、砂遊びしている最中に俺が言ったことって覚えてないよな？
ゴメン…
まったく記憶にないわ…
だよな…
まぁ、好きってちゃんと最後まで言えてないんだけどな…
んん？
なんか言った？
いやっ…別に…
とくになにも…
あっ…
でも、小学生の時に砂遊びをしているのは覚えているかも…
確か、夕方頃に遊んでいた気が…
そう！！！
少しは覚えているんだ！良かった〜
まぁ…
細かいことまでは覚えていないけど…
2人は交差点で赤信号を待っている。
そうだ！！！
守はカバンからA4サイズの花火大会の日程が示されたチラシを取り出し香奈に見せた。
来週さ、この辺で花火大会があるんだけど行かない？
もしかしたら桃井の記憶も戻るかもしれないし…
花火大会か〜
全然見に行ってないな〜
どう…かな？
いいね！
行こう！！！
おう！
じゃあ決まりだな！
美穂も誘っていい？
みんなで行った方が楽しいじゃん？
あぁ…
そうだな！！！
んじゃまた来週！
信号が青に変わった。
2人は別々の道へと別れ、自宅へと帰って行った──。
つづく
