第15話 「母」

文字数 1,340文字

── 21:00 病院 ──
香奈は病室のベットで横になっている。

守と美穂は香奈の近くで様子を伺っている──。

香奈…

目覚めないね…

大丈夫…

あいつは昔っから図太い女だから、こんなところでやられるはずがねぇよ!

だといいんだけど…
刻々と時間が過ぎていき病室の時計の秒針とバイタルセンサーの音だけが

病室を淡々とさせる──。

私、ちょっと自販機で飲み物買ってくるね!
あぁ…
守も何かいる?
んじゃあ、コーラで!
美穂は病室を出ていき自販機がある場所へ向かった。

すると、守は香奈の微々たる目の動きに気づいた。

桃井!?

気がついたか!?

香奈は守の方へ頭を向けた。
菊場くん…?
おお!!

目を覚ましたか!?

もしかして…守?

菊場守くん…?

えっ…

俺のこと覚えているのか…?

守は突然の香奈の発言に驚き言葉が出なかった──。
── 幼稚園児の頃のフラッシュバック──
香奈は兄である雛川の誕生日パーティーに向けて準備をしている。

すると庭の方から男の子の叫び声がする──。

おーーい!!!

香奈!サッカーしようぜ!!

なんだ…

守か〜

なんだって、なんだよ!!!

どうせお前暇だろ!!俺が誘いに来たんだよ!!!

お前の暇つぶしの救世主だ!!!

今日は無理!
なんでだよ!

なんかあんのか!?

今日はお兄ちゃんの誕生日だから!

その準備をしなきゃいけないの!

だから、守に構ってる暇なんてないの!!!

そっか〜

今日、お前の兄ちゃんの誕生日だったか〜!

よっし!俺も手伝ってやる!!

えっ!?

守が…

そうと決まったら早速やるぞ〜

お邪魔しま〜す!!

守は庭で靴を脱いで部屋に入っていった。
ちょっと勝手に入らないでよ〜
てか、おばさんはいないの?

買い物?

いるよ!

今、体調悪くて横になってる…

ほ〜ん…

そうか…んじゃ、おばさんの分まで頑張らないとな!

手伝うのはいいけど、足引っ張んないでよね〜
わかってるって!
香奈と守は協力して飾り付けを行った──。
よ〜し!

だいぶできてきたな!

そうだね〜

守がいてくれて助かったよ!

あったりまえだろ!!
そうやって調子に乗らないの!
へへ〜んだ!

俺にとっちゃ朝飯前ってところよ!

って、痛ってえぇぇぇぇぇーーー!!!!!

守はテーブルの角に小指をぶつけてしまった。
ほらっ〜…

そうやって調子に乗るから…血まで出てるじゃない…

痛ててててぇ…

すまん、すまん…

もう〜

ちょっと待ってて!

絆創膏取りに行ってくるから…

すまね〜
香奈は2階へ向かった──。
確か、絆創膏ってお母さんの部屋だっけ〜
香奈は絆創膏を探しにお母さんの寝室へと入り、タンスを開いて絆創膏を見つける。
あった…!

お母さん、絆創膏もらうね〜

香奈はお母さんが寝ているベットを振り返った──。
お母さん…?
香奈は少しづつ、そっとお母さんが寝ているベットへ近づく。
お母さん?

起きてる?今ね、守が来てるんだけど…

香奈は布団をそっとはがす──。
──────。
お母さん!!!???
香奈は大声で叫んだ。
んん?

なんだ!?

香奈の大声に気がついた守は、

小指の怪我を我慢しながら急いで階段を走り2階へと向かった──。

香奈!!!

なにかあったのか!?

守は勢いよくお母さんの寝室の扉を開け入った。

すると香奈は、守の方を見て涙ぐんだ表情で話しかけた──。

お母さんが…

お母さんが息をしてない──。

守はその場で立ちすくみ言葉を失う──。



つづく

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

本が大好きで不器用な性格の高校二年生「桃井 香奈(ももい かな)」

突如、図書委員に任命される。

図書室でミステリー小説を毎回借りにくる先輩「雛川 海斗(ひなかわ かいと)」

おとなしい性格で真面目だ。

彼には『とある秘密』がある──。

去年の冬に転校してきた女の子「冴島 美穂(さえじま みほ)」 

今年、桃井香奈と同じクラスになり生徒会をしている。

好奇心旺盛でちょっぴり天然な子

桃井香奈と同じクラスで担任の先生をしている。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色