第5話:三宅島大噴火と勝江の出産

文字数 2,014文字

 噴火開始から20分後には、小火口の列が南北に延びていった。割れ目火口から列をなして高さ100メートル以上に吹き出た溶岩は、主に火口西方にある阿古方面、南西にある錆ヶ浜方面、南南西の粟辺方面の3つに分かれて流れた、阿古方面に流れた溶岩流は、時速、約1.7キロで流下し18時頃には民家を焼き阿古地区の一部を飲み込んだ。

 粟辺方面に流れた溶岩流は、17時56分に海に到達したことが確認されている。一方、16時17分に新澪池の北西で大噴煙が上がり16時38分には、最初のマグマ水蒸気爆発が発生。17時10分頃には島の南端、新鼻付近で爆発が発生した。17時22分には隣の御蔵島から新澪池の西方で火柱が目撃されている。その後、19時17分に新澪池北西から西方にかけて激しい爆発が発生。

 21時40分には新鼻およびその東側で最も激しい水蒸気爆発が発生。翌4日未明にかけて爆発や噴火が相次いだ。これらの一連の火山活動によって周辺に大量の岩塊や東方の坪田方面に火山礫や火山灰が降下した。溶岩の流出は4日の早朝には、ほぼ止まった。住宅の埋没・焼失は、約400棟。山林耕地等に被害が出たが、幸いにも人的な被害はなかった。

 国土地理院の測定によると噴出物の総量は、溶岩流が530~742立法メートル、火山灰等が636立法メートル、計2千万トンであった。噴火前後に合計101回の有感地震が発生し、そのうちの最大は3日22時33分に発生したマグニチュード6.2の地震で、三宅高校では、震度5を観測した。1983年10月12日、ロッキード事件の公判で元首相の田中角栄に実刑判決が下された。その後、1984年が明けた。1984年1月9日、日経平均株価が終値ではじめて1万円を突破した。

 1984年1月18日、渡田の奥さんの勝枝さんが、体調が悪いと言うので産婦人科を受診すると妊娠が判明し出産予定日が1984年7月18日と告げられた。その後、7月16日に産婦人科に入院して18日の朝、元気な泣き声の男の子を出産し、渡田元一と命名した。その後、アパートに帰ると勝枝さんのお母さんが、手伝いに来てくれた。吉行寅三さんも出産祝いをたくさんもらった。

 産後、しばらくすると乳母車を押して勝枝さんは、母と共に散歩に出かけた。9月になっても暑く、勝枝さんは玉の汗をかいた。それでも10月を過ぎると涼しくなり元一が、いっぱいおっぱいを飲むので、勝枝さんは、おなかが空いてしまい食べるものを近くに置いておくようにした。やがて12月を迎えた。12月7日、高級ディスコ麻布十番マハラジャがオープン。社会現象と呼ばれるほどの人気を博した。

 1980年代後半のバブル経済期に高級ディスコブームを巻き起こす元祖となる。やがて1985年を迎えた。1985年3月21日、日本初のエイズ患者を認定された。4月1日、日本電信電話公社「電電公社」が、日本電信電話株式会社「NTT」に日本専売公社が日本たばこ産業株式会社「JT」 に民営化された。8月12日、日本航空123便墜落事故が、発生した。歌手の坂本九らを含む乗客520人が死亡した。

 日本の航空機事故では、史上最悪の大惨事となった。9月22日、G5「日本、アメリカ、西ドイツ、イギリス、フランス」が、プラザ合意声明を発表した。日本では、その後のバブル景気の原因のひとつになる。11月15日、大島の三原山、山頂の竪坑状火孔で始まった。11月19日昼頃、直径800メートルの内輪山の内側が溶岩で埋め尽くされ、内輪山縁にあった火口茶屋が焼失した。

 さらに溶岩が内輪を超えて北西部からカルデラに800メートル流れ出した。噴火を見ようと5千人を超える観光客が押し寄せた。噴火は一旦小康状態となり、立ち入り禁止区域に指定されて営業できなくなった商店は営業許可を求めて町役場に陳情に訪れた。噴火開始から6日後の11月21日になると、昼過ぎからカルデラ北部で地震が頻発し16時15分、カルデラ床からの割れ目噴火が発生した。

 この噴火は一連の噴火で最大級のもので噴煙は高度8千メートルに達した。これまでに経験したことのない揺れと噴火を前に大島町役場は直ちに対策本部を設置、本部長には当時の大島町長、植村秀正により、町助役の秋田壽が指名された。秋田は、1957年の噴火を知る数少ない現役職員の一人であった。17時46分には外輪山外の北西山腹からも割れ目噴火が始まり溶岩が斜面を流れ下り3千人が住む元町集落に迫った。

 この溶岩は、最終的に元町の人家から数百メートルまで迫る。割れ目噴火は北西側に伸びたため当初は島南部への避難が行われたが、地震活動が南東部へ移動したことや波浮港周辺での開口割れ目が確認され、噴火のさらなる拡大が、懸念されたことで22時50分には、全島避難が決定された。対策本部の救援要請を受け東海汽船所属船8隻や周辺の漁船2隻が、救援に駆け付けた
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