第１話：通信大学、吉行さんからの支援

　渡田惣吉は、１９５８年５月１８日、茨城県の波崎港の近くの半農半漁の農家に生まれた。ここらでは、農繁期には、手猫の手も借りたいほど忙しいので、小学校上級生になると渡田惣吉をはじめ、近所の同級生、沢野勝枝、久山順子、朝永竜彦などが、野菜、米の刈り取りや鶏小屋の掃除、卵を取りに言ったり忙しくしていた。そのため勉強する暇もなかった。

　４人とも体は大きく、元気に育った。また、夏には、海に泳ぎに行き、外海なので、波が、荒く、必然的に泳ぎが上手になった。食べるものは、売れ残った野菜、果物。その他、腹が減ると乾燥芋「干し芋」を食べていた。１９７１年、中学に入学し、渡田惣吉と朝永竜彦は、野球部に入った。沢野勝枝、久山順子は、陸上部に入った。

　渡田惣吉と久山順子は、小さいころからそろばんを習って計算が早かった。また、成績も上位であった。朝永竜彦は、ピッチャーで４番バッターで、女の子にもてた。渡田惣吉は、体力をつけるために小さいころから砂浜を朝、走りこんでいた。波崎中学を卒業すると渡田惣吉、久山順子、沢野勝枝は、波崎高校の商業科に入学した。

　朝永竜彦は、川向こうの銚子高校野球部にスカウトされて、野球部の寮に入って。盆と正月しか波崎に帰ってこなくなった。　渡田惣吉、久山順子、沢野勝枝は、１９７７年高校を卒業すると渡田惣吉と沢野勝枝は、地元の同じスーパーマーケットに就職した。しかし都会にあこがれていた久山順子は、東京のスーパーに入社し波崎を後にした。

　渡田惣吉は、沢野勝枝に大学の通信講座を受講しないかと誘い、手続きを取った。渡田惣吉は、熱心に勉強していたが、沢野勝枝は、仕事が忙しいと言う理由で半年くらいで、辞めてしまった。それでも渡田惣吉は睡眠時間を減らして勉強を続けた。その後、なんとか時間を作って、通信講座を受けてる大学のスクーリングにも参加した。

　この話を聞いた波崎港の船主、吉行寅三が、しばしば、魚を持って渡田惣吉の家に取れた魚を無料で差し入れしてくれた。そして奨学金が必要なら言ってくれと言ってくれた。両親が、訳を聞くと自分も昔、高校を出た後、大学にあこがれていたが、漁師の仕事で断念した思い出があるので、気持がよくわかると言って渡田惣吉の肩をたたいた。

　そして成人したら株投資を俺と一緒にやって金を作れと励ました。吉行寅三は、その後も忘年会に招待してくれたりいして良くしてくれた。１９７８年５月１８日、渡田惣吉の２０歳の誕生日、吉行寅三さんから電話が入り、お前、スーパーの休みは、何曜日と聞かれ水曜と答えた。すると、来週水曜日、天気が悪かったら証券会社で口座を開けと言った。

　その後、お前の誕生会を町中の寿司屋でやってやると言ってくれた。わかりましたと答え、電話を切った。５月２４日は、朝から雨で、７時過ぎ、吉行寅三さんから電話で、１０時に車でお前の家へ行くと言われ、待った。その後、車に乗って、銚子の町中のＮ証券で、渡田惣吉が、証券口座を開いた。その後、吉行寅三さんが、３０万円を貸すと言った。

　近く銀行に入って、送金手続きをして渡田惣吉の証券口座に５０万円を入金してくれた。帰りの車の中で、お前にやるんじゃない。儲かったら、返せよと笑いながら告げた。株の売買は、俺から電話するからと言われ了解と返事した。この頃、渡田は、月に１回のペースで沢野勝枝に喫茶店で会って話をしていた。夏のボーナスが出たので貯金から５０万円を証券口座に振込１００万円にした。

　夏の間も２人で、海水浴に出かけてデートを続けていた。秋になるとバイクに彼女を載せて銚子の映画館へ行って月に１回、映画を見て青春を謳歌していた。やがて１９７９年となった。２月の寒い朝、証券会社の担当者から日本電気株の気配値が、２３０円で安いから買いと言われ、同意し、４千株、成り行き注文を出した。するとすぐに９２万円で買え残金８万円となった。

　５月９日、日本電気からパーソナルコンピューター「ＰＣ８００１」が、新発売されたとのニュースが、渡田惣吉の耳に入った。もし、これが売れれば、日本電気が、急上昇するかもしれないと思うと渡田惣吉の胸は高鳴った。その後、沢野勝枝とのデートの時、その話をすると、そんなに人生甘くないわよと笑われた。まー、そうかもしれないねと相槌を打った。

　７月１日、ソニーが携帯型ステレオプレーヤー「ウォークマン」を新発売した。これには、渡田惣吉も驚いた。歩きながら音楽を聴けるなんて夢のようだと感じ、こういうのが、技術の進歩と言うものだと感心した。その予想通り、その後、ウォークマンを持って、耳にイヤホンしながら、音楽を聞いて歩くと言う若者が、大勢現れた。大げさに言えば、これは、音楽の聴き方の種の革命だと感じた。