第6話 ケン・サンダース
文字数 1,662文字
ケン・サンダース。
くしくも新チーム名と似た姓を持つ彼はアメリカ生まれだが、ジャマイカ出身の父と日本出身の母を持つハーフだ。
体格にあまり恵まれているとは言えない、公称5フィート10インチ、180㎝としているが、実は2インチほど低く、175㎝しかない、体重も190ポンド、86kgと公称しているが、実は178ポンド、80kgしかない。
日本人としてならば決して小さくはないが、アメリカ人、とりわけフットボーラーの中に混じるとひときわ小さい。
しかし、父親譲りの身体のバネは強靭だ、それをもってすれば小さな身体も必ずしも不利にはならないのだ。
オフェンスラインメンならばランニングバックが走れる穴を開け、クォーターバックがパスを投げる時間を稼いでやらねばならないから大きな身体とパワーは不可欠、ディフェンスバックと競り合ってパスをキャッチしなければならないレシーバーならば、体重はともかく、身長が高い方が有利なことは間違いない、大男が揃うラインメン越しにレシーバーを探し、パスを投げるクォーターバックも身長が高い方が有利だ。
しかし、必ずしも大きくなくても務まるのがランニングバックと言うポジションなのだ。
ケンは決して大きくないが、瞬時にトップスピードに乗れるパワーを持っている、相手に当たって行くエネルギーの大きさは体重だけで決まるものではない、スピードはエネルギーに変換できる、ケンは体重の軽さをスピードで補うのだ、そして瞬時にスピードを上げられるという特徴は捕まえ難さにも繋がる、掴んだつもりがするりと抜けられてしまうのだ、そしてその特徴は密集を抜け出す瞬間に最も効果的だ、密集の中で一旦は止められたかのように見えても、ケンは僅かな隙さえ見つけられればそこから抜け出すことが出来るのだ。
ケンもドラフトでは3巡目だった。
大学時代は大活躍したものの、プロでは身体の小ささが懸念材料とされたのだ。
しかし、ケンはルーキーイヤーから頭角を現した。
クォーターバックと違って、ランニングバックは毎スナップ出場する事は稀だ、メインに起用されるのはエース・ランニングバックなのは当然だが、瞬間的に最大のパワーを出すことが要求されるランニングバックは出づっぱりと言うわけには行かない、当然控えランニングバックにも出場機会は与えられる、そうやってプロのパワーとスピードに慣れるとシーズン後半にはエースを凌駕する活躍を見せた。
2年目はシーズン当初からエースの扱いを受け、リーグトップの獲得ヤード数を挙げてスタープレーヤーに躍り出たのだ。
通常、ルーキーとの契約は3~4年、入団時に4年契約を結んだケンは今年で契約期間を終えた、野球のメジャーリーグでもそうだが、NFLでは契約期間が終了すればほぼ自動的にフリーエージェント、FAとなる、そして、選手の総年棒の上限を定めたサラリーキャップ制が敷かれていることから、チームの顔とも言うべきスタープレーヤーでも再契約できるとは限らない。
ケンが在籍したチームではエースクォーターバックも契約更改となる、クォーターバックもケンも大型契約を望んでいて、チームとしてはどちらか一方は諦めなければならない状況にあるのだ。
そしてそんな状況の下で、ケンは東京サンダースに大きな関心を寄せていた。
何度も訪れたことがある母の故郷・日本に初めて創設されるNFLのチーム、綴りこそ違うがくしくも自分の姓とよく似たチーム名、そして伝説的名GMのジムから熱心に誘われれば心が動かない筈もない。
フットボールに限らずプロスポーツは興行でもあり、目玉となるスター選手はどうしても必要だ、それが日本人の血を引くケンであるならば申し分ない。
そして、ジムが作り上げようとしているチームは総合的にバランスが取れたチームであり、サラリーキャップに苦しめられる心配もない、ケンが満足する条件は提示可能だ。
現チームにも愛着を持つケンではあったが、再契約交渉が難航している現状を鑑みればサンダースへの移籍は決定的とも言えた。
くしくも新チーム名と似た姓を持つ彼はアメリカ生まれだが、ジャマイカ出身の父と日本出身の母を持つハーフだ。
体格にあまり恵まれているとは言えない、公称5フィート10インチ、180㎝としているが、実は2インチほど低く、175㎝しかない、体重も190ポンド、86kgと公称しているが、実は178ポンド、80kgしかない。
日本人としてならば決して小さくはないが、アメリカ人、とりわけフットボーラーの中に混じるとひときわ小さい。
しかし、父親譲りの身体のバネは強靭だ、それをもってすれば小さな身体も必ずしも不利にはならないのだ。
オフェンスラインメンならばランニングバックが走れる穴を開け、クォーターバックがパスを投げる時間を稼いでやらねばならないから大きな身体とパワーは不可欠、ディフェンスバックと競り合ってパスをキャッチしなければならないレシーバーならば、体重はともかく、身長が高い方が有利なことは間違いない、大男が揃うラインメン越しにレシーバーを探し、パスを投げるクォーターバックも身長が高い方が有利だ。
しかし、必ずしも大きくなくても務まるのがランニングバックと言うポジションなのだ。
ケンは決して大きくないが、瞬時にトップスピードに乗れるパワーを持っている、相手に当たって行くエネルギーの大きさは体重だけで決まるものではない、スピードはエネルギーに変換できる、ケンは体重の軽さをスピードで補うのだ、そして瞬時にスピードを上げられるという特徴は捕まえ難さにも繋がる、掴んだつもりがするりと抜けられてしまうのだ、そしてその特徴は密集を抜け出す瞬間に最も効果的だ、密集の中で一旦は止められたかのように見えても、ケンは僅かな隙さえ見つけられればそこから抜け出すことが出来るのだ。
ケンもドラフトでは3巡目だった。
大学時代は大活躍したものの、プロでは身体の小ささが懸念材料とされたのだ。
しかし、ケンはルーキーイヤーから頭角を現した。
クォーターバックと違って、ランニングバックは毎スナップ出場する事は稀だ、メインに起用されるのはエース・ランニングバックなのは当然だが、瞬間的に最大のパワーを出すことが要求されるランニングバックは出づっぱりと言うわけには行かない、当然控えランニングバックにも出場機会は与えられる、そうやってプロのパワーとスピードに慣れるとシーズン後半にはエースを凌駕する活躍を見せた。
2年目はシーズン当初からエースの扱いを受け、リーグトップの獲得ヤード数を挙げてスタープレーヤーに躍り出たのだ。
通常、ルーキーとの契約は3~4年、入団時に4年契約を結んだケンは今年で契約期間を終えた、野球のメジャーリーグでもそうだが、NFLでは契約期間が終了すればほぼ自動的にフリーエージェント、FAとなる、そして、選手の総年棒の上限を定めたサラリーキャップ制が敷かれていることから、チームの顔とも言うべきスタープレーヤーでも再契約できるとは限らない。
ケンが在籍したチームではエースクォーターバックも契約更改となる、クォーターバックもケンも大型契約を望んでいて、チームとしてはどちらか一方は諦めなければならない状況にあるのだ。
そしてそんな状況の下で、ケンは東京サンダースに大きな関心を寄せていた。
何度も訪れたことがある母の故郷・日本に初めて創設されるNFLのチーム、綴りこそ違うがくしくも自分の姓とよく似たチーム名、そして伝説的名GMのジムから熱心に誘われれば心が動かない筈もない。
フットボールに限らずプロスポーツは興行でもあり、目玉となるスター選手はどうしても必要だ、それが日本人の血を引くケンであるならば申し分ない。
そして、ジムが作り上げようとしているチームは総合的にバランスが取れたチームであり、サラリーキャップに苦しめられる心配もない、ケンが満足する条件は提示可能だ。
現チームにも愛着を持つケンではあったが、再契約交渉が難航している現状を鑑みればサンダースへの移籍は決定的とも言えた。