第四章 楽器店へ行こう

文字数 1,004文字

帰り道。
お疲れさま。いす香、江藤先輩はどうだった?
あ、ミッチー。待っててくれたん?
……その顔だと、ダメそうだね。
……まあでも! これから挽回のチャンスがあるかもしれないから、まあ、大丈夫だよきっと!
挽回かぁ……。
なぁミッチー。それなんやけど、やっぱ作曲担当って江藤先輩やなくてもええん違うかなって。
え、それはそうだと思うけど……どうしたの、急に。
いや、考えてみたら江藤先輩にこだわる必要もないかなーって。
作曲できる人なんて、レアはレアやけど他にもおるしー。
(あんまり柏さんと江藤さんに迷惑かけとうないしなぁ……)
うーん、まあ。これは結局いす香の問題だから。
いす香がそう言うならいいんじゃないかな?
――ミッチー、おおきに。
ごめんなー、江藤先輩のことも応援してもらってたんに、急にやめるとか言い出して。
いす香が優柔不断なところあるのは、よく知ってるからね。
今更気にしないよー。
一緒に地獄の底までランデブーしてやんよ!
なんやねん地獄の底って! 失敗前提かいな! ひどっ!
しかし、作曲できる人かぁ。どこで探せばええんやろ……。
作曲かぁ。――ねえ、いす香。思ったんだけどさ。
最近はパソコンでも音楽作れるソフトがあるけど、基本的には作曲って、楽器を使うものだよね?
ああ、そうか、楽器店! 確かにそういうところ見て回れば誰かしら居そうやな!
楽器店なら商店街にあったはず……!
今日はちょうどバイトもオフやし、行ってみよーっと。
良かった。役に立てたみたいで。
じゃあ、私はこれで帰るね。今日は塾の日だから。
おう、ミッチーもいろいろ大変やなぁ。がんばりやー!
十分ほどの後、シェイクスピア楽器店。
うーん、楽器店ってどんな感じなんやろと思っとったけど、結構賑わってるみたいやなー。
レジ横にちょっとウチのCDショップのチラシでも置かせてもらえないやろか?
――って、今回は店の営業やのーて、作曲できる人探しに来たんやったわ!
つっても、だれが作曲できるかなんて、どうやって見極めればええんやろ?
その時、いす香の耳にキーボードの曲と美しい歌声が聞こえた。
――不思議なチカラ感じてるよ
鏡写しみたいな二人
サイコーのコンビネーション
――
うわ、誰やろ。めっちゃ歌うまっ!?
聞いたことない曲やけど――インディーズかなぁ。
いす香はキーボード売り場を覗きこんだ。
そこで滑らかな手つきでキーボードを弾きながら、軽やかに歌い上げていたのは。
うっそ、江藤さん!?
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登場人物紹介

|由田≪よしだ≫いす|香≪か≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
|音笛瑠野≪いんふえるの≫商店街のCDショップでバイトする、アイドルが大好きな少女。
ある日クリスに誘われて、伝説のライブ「プリティーヘブン」を目指すことに。
ドジで自分に自信が無かったけれど、アイドル活動をするようになって少しずつ変わっていく。

|叶≪かのう≫クリス 三十三歳
かつて世界を震撼させたトップアイドル。
今は活動を休止して、新たな世代のアイドルを指導することに力を入れている。
新たな伝説を作るライブ「プリティーヘブン」の主催者。
謎多き人物。

|江藤≪えとう≫|萌花≪もか≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
天才的なピアノの腕を持つ江藤|珠里≪じゅり≫の妹でありながら、自分も作曲の才能を持つ。
引っ込み思案ながら心優しい性格で、娘CUTEsのまとめ役でもある。

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