第八章 下駄箱の中の手紙

文字数 1,043文字

そのとき、教室の前のドアが開いた。
おはよう。
おはよう、萌花。
――あら? 手に持っている紙は何? 配布プリントなんかあったかしら。
ううん、プリントじゃなくて、なんか、下駄箱に手紙が入ってて……なんだと思う?
下駄箱に手紙!? まさか、ラブレター!?
あはは、まさかぁ。そんなのくれるくらい私と仲のいい男の子なんていないじゃない。
それもそうだけど……でも下駄箱の手紙といえば、ラブレターか果たし状でしょ?
萌花は誰かの恨みを買うタイプじゃないし、果たし状よりはラブレターの方が可能性高いんじゃないかしら?
確かに果たし状はラブレターよりナイと思うけど……果たし状かぁ。
そうだったらちょっと怖いなぁ。
もし果たし状だったら、私が代わりに行ってきてあげるわ!
萌花は心配しないで!
えええっ!? そこまでしてくれなくていいよ! ユッコ、水泳部なのに怪我したら大変でしょ?
――というか、まだ果たし状と決まったわけじゃないし。
とりあえず中を確認しない?
それもそうね……。
カミソリの刃とか入ってたら危ないから、気をつけて開けましょう。
その頃、いす香たち。
何が果たし状や! カミソリレターや! 柏さんは江藤さんのこととなると人聞き悪すぎやろ!
うーん、盗聴してる時点で何言われても文句言えないと思うよ。盗聴器なんかどこで仕入れたの?
新聞部の|子浪≪こなみ≫さんに借りた!
うちの学校の新聞部怖い。
一方、萌花は。
普通の手紙みたいだね。
じゃあやっぱりラブレターの方なの!?
さすがにそれは読んでみないとわからないよ……。
じゃあ読んでみるね。
一ヶ月前、楽器店であなたの演奏を聴きました。
とても綺麗な音色に感動しました。これからも頑張ってください。
何よこれ。ラブレターっぽいけど、随分と雑な手紙ね。
それに、差出人の名前が書いてないし、これじゃ返事のしようが――。
――返事かぁ。
決めた! ユッコ、私、返事してくるね!
えっ、ちょっと! 返事って言ったって、だって相手がわからないんじゃ。
そっちじゃなくて!
教室の後ろの方へと、萌花は駆け出す。
由田さん!
うわ、江藤さん!? どうしたん、いきなり!
(あっぶな、盗聴ばれるところやった! その場で直接来るんは計算外やわ)
やっぱり私、アイドルやってみる!
まだちょっと自信はないけど……やってみたい!
――そっか。じゃあ、今日の放課後、ライブハウス前で集合な!
うん!
その様子を教室の前で見ていた有子は。
こんなに上手くいっていいものかしら……?
――あら? この手紙の人、一ヶ月前って書いてるけど……?
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登場人物紹介

|由田≪よしだ≫いす|香≪か≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
|音笛瑠野≪いんふえるの≫商店街のCDショップでバイトする、アイドルが大好きな少女。
ある日クリスに誘われて、伝説のライブ「プリティーヘブン」を目指すことに。
ドジで自分に自信が無かったけれど、アイドル活動をするようになって少しずつ変わっていく。

|叶≪かのう≫クリス 三十三歳
かつて世界を震撼させたトップアイドル。
今は活動を休止して、新たな世代のアイドルを指導することに力を入れている。
新たな伝説を作るライブ「プリティーヘブン」の主催者。
謎多き人物。

|江藤≪えとう≫|萌花≪もか≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
天才的なピアノの腕を持つ江藤|珠里≪じゅり≫の妹でありながら、自分も作曲の才能を持つ。
引っ込み思案ながら心優しい性格で、娘CUTEsのまとめ役でもある。

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