第七章 江藤さんを誘う方法

文字数 1,018文字

その日の夜。いす香の自宅。
――よし。決めた。
やっぱりウチは江藤さんの歌と曲に惚れたし、江藤さん自身もいつまでもオドオドして教室の隅っこにおるより、自信つけた方がええに決まっとる。
おまけに柏さんかて、江藤さんが前向けるようになったら喜ぶ。
ウチが大好きなWinWinっつーやつやわ!

しっかし江藤さん、先輩に対するコンプレックスむっちゃ拗らせとるもんなー。
どうしたもんやろ。
柏さんが言うてもお世辞思って訊かん言うとったし、そんならウチが今更言うてもなおさらダメやろ。
下手したら柏さんの差し金や思われるんがオチやわ。
うーむ……。
その時。いす香のスマートフォンが鳴った。
ん? なんやろ?
何々? 『どるおた☆あっちゃんから友達リクエストが届いています』!?
知らん人やん! 怖っ!?

なんでフォローされてんやろ!?
この間のライブ見た人かな? でもあいにくこのアカウントはプライベート用やっつーの!
ブロックしたろ!

ブロックボタンをタップする直前、スマートフォンに『どるおた☆あっちゃん』からのメッセージが届いた。
『やっほー☆ミッチーでーす! こっちはアイドル応援用アカウントなんだけど、いす香がアイドル始めたから、こっちでもフォローすることにしました。しくよろー』
って、ミッチーかーい! 驚かすなやー!
いす香はベッドの上にスマートフォンを放り投げた。
しかし、プロフ画が自撮りやないとか、『どるおた☆』の時点で男かと思ったんもあるけど……こーいうのの送り主って意外とわからへんもんやなー。
ん? 送り主がわからへん……?
そや! えーこと思いついたっと!
まあそれはそれとしてミッチーは明日あったらしばく!
驚かせよってからに!
翌朝、1年B組教室。
おはよー!
おはよーミッチー! ありがとさんっ! とうっ!
痛っ!? なんでお礼言いながら本気でチョップするの!?
お礼の理由とチョップの理由、どっちから聞きたい?
何その「いいニュースと悪いニュース」みたいなの?
――とりあえず、チョップのほうから聞くけどさぁ。
それは昨日いきなり知らんアカウントでフォローしてきてウチをビビらしたからや!
本気で変質者かと思うたわ!
うう、それはごめん……。
で、な! お礼のほうは、ミッチーのおかげでユニットメンバー勧誘のええ方法が思いついたんや!
私のおかげ?
そそ、昨日フォローされたおかげで! 怪我の功名っつーやつやな。
どういうこと?
ふっふっふ。まあ見とれ! そろそろ教室に来るはずやからな。
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登場人物紹介

|由田≪よしだ≫いす|香≪か≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
|音笛瑠野≪いんふえるの≫商店街のCDショップでバイトする、アイドルが大好きな少女。
ある日クリスに誘われて、伝説のライブ「プリティーヘブン」を目指すことに。
ドジで自分に自信が無かったけれど、アイドル活動をするようになって少しずつ変わっていく。

|叶≪かのう≫クリス 三十三歳
かつて世界を震撼させたトップアイドル。
今は活動を休止して、新たな世代のアイドルを指導することに力を入れている。
新たな伝説を作るライブ「プリティーヘブン」の主催者。
謎多き人物。

|江藤≪えとう≫|萌花≪もか≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
天才的なピアノの腕を持つ江藤|珠里≪じゅり≫の妹でありながら、自分も作曲の才能を持つ。
引っ込み思案ながら心優しい性格で、娘CUTEsのまとめ役でもある。

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