第三章 先輩に直接交渉!

文字数 1,030文字

その日の放課後。
あー、もう! セコム突破してまで妹経由するんはコスパ悪すぎる!
こうなったら直接交渉した方が早い!
えーと、江藤先輩は三年C組やから……この教室やんな。すんませーん!
あら、一年生? 三年生の教室に何の用かしら?
お、いきなり江藤先輩! いやー、幸先ええわぁー!
ウチ、一年B組の由田いす香言いますん! 今日は先輩に頼みたいことがあって――。
頼みたいことねぇ……それは私にとって何の得があることかしら?
得……?
(何や、江藤先輩意外と感じ悪いなぁ)
――? どうしたのかしら?
え、ええ。まあ、そりゃあもちろん――。
(しもたぁ! いくらアイドルになれるっつーても、何のフォローもない茨の道、
しかも江藤先輩クラスの人ならウチなんかに足引っ張られるより自分で勝手にやった方が上や!)
チッ。
(舌打ち!?)
それじゃ。私忙しいから。またね。
あっ、ちょっと江藤先輩!?
なんや、あの態度! ホンマ腹立つわぁ!
――驚いた。まさか直接珠里さんのところに行くなんてね。
柏さん!? なんで三年生の廊下なんかに――。
由田さんが余計なコトして萌花にまで迷惑がかかったら大変だから様子を見てただけよ。
余計なコト――って、江藤先輩もやけどアンタも大概失礼なやっちゃなー!
ああ。私がコミュ力ないのはもともとだけど……。珠里さんは昔はあんなじゃなかったの。
昔は……そっか。柏さんって、うちのクラスの江藤さんと同中っちゅーことは、江藤先輩とも同中か。
というか、私たち三人、幼馴染みだけど。
えっ、そうなん!? 今知ったわ!
珠里さんも昔は優しくていいお姉さんだったんだけど……。
去年の文化祭での演奏が市の偉い人の目に止まって、結構大きい賞で表彰されてね。
それこそ、一時期テレビの取材とかが来るくらいよ。
……それで天狗になってもーた、ってコト?
権威に弱いタイプの人って、どこにでもいるじゃない。
私だって、こんなことがあるまで珠里さんがそんなタイプだなんて、思いもしなかったけど。
まあ、珠里さんが権威に弱いとか、そういう話は今はどうでもいいわ!
どうでもええのん!?
そうよ、問題は萌花よ萌花!
珠里さんが勝手に一人で天狗になってるのはいいけど、最近萌花のことを見下してるのだけは気に入らないわ。
萌花って昔からあまり堂々としたタイプじゃなかったけど、最近じゃ珠里さんの影響でどんどん落ち込みがちになっちゃって……。
そっか……江藤さんも大変やんな……。
(柏さん、キツいタイプではあるけど、友達思いのええ子やなぁ)
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登場人物紹介

|由田≪よしだ≫いす|香≪か≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
|音笛瑠野≪いんふえるの≫商店街のCDショップでバイトする、アイドルが大好きな少女。
ある日クリスに誘われて、伝説のライブ「プリティーヘブン」を目指すことに。
ドジで自分に自信が無かったけれど、アイドル活動をするようになって少しずつ変わっていく。

|叶≪かのう≫クリス 三十三歳
かつて世界を震撼させたトップアイドル。
今は活動を休止して、新たな世代のアイドルを指導することに力を入れている。
新たな伝説を作るライブ「プリティーヘブン」の主催者。
謎多き人物。

|江藤≪えとう≫|萌花≪もか≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
天才的なピアノの腕を持つ江藤|珠里≪じゅり≫の妹でありながら、自分も作曲の才能を持つ。
引っ込み思案ながら心優しい性格で、娘CUTEsのまとめ役でもある。

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