第十章 二人でライブ!

文字数 1,012文字

お、前のライブが終わったみたいだね。――お疲れ、|夜羽≪よはね≫ちゃん!
(よはね……。|鷲宮≪わしみや≫夜羽か!
メジャーデビューはまだやけど、ネット配信やと人気急上昇中やっていう……!
このライブハウス使うとったんか!)
すごい……! ドアが開いたとたん中から伝わってくる熱気が……!
(あ、出てきよった……!)
マスターさん、今日も会場の確保ありがとう。
はえー……やっぱすごい人ってオーラが違ごてんなぁ……。
由田さん……あんなすごい人のあとで私たち大丈夫なの……?
う……うーん……。
ま、まあ大丈夫とちゃう? ほら、ウチらと鷲宮夜羽は芸風ちゃうし!
由田さん。一瞬間が空いたけど本当に大丈夫?
おう、大丈夫やて。って何で疑うん!?
(そりゃあまあ、由田さんだからだけど……)
ま、歌ってれば気持ちなんかいずれ晴れるって!
さ、行こ行こ!
二人がステージに出ると、直前の夜羽のライブから続けて見る客がいるからか、会場の人口は多く、二人を期待の目で見つめていた。
どーもー! こんにちはー!
由田さん、それだとちょっとアイドルというより漫才師っぽいよ……。
(あんな感じで本当に大丈夫なのかしら……?)
(――客席にユッコ!? 応援に来てくれたんだ!)
音楽がかかり、二人は歌い出す。
著作権フリーとはいえ、多くの歌い手に歌われている、ネット上では有名な楽曲だ。
観客がノリやすい反面、歌もダンスも失敗すればすぐにわかってしまう。
緊張の中にありながらも、二人は笑顔でステップを踏む。
(っしゃ、ここから江藤さんのソロパートや!
頼んだで、江藤さん!)
(すごい……! こんなにたくさんの人が、私の歌を聞いてくれてる……。
お姉ちゃんと比べないで、私の歌を……!)
(なんだか、とっても楽しい!)
(――萌花!)
歌が終わり、アウトロが流れる。
最後のステップを揃えて、二人は最後の決めポーズをとった。
どーも、ありがとうございましたー!
由田さん、だからそれだと漫才師っぽいよ!
いす香たちは舞台脇の出口を出て、ほっと一息ついた。
やあ、二人ともお疲れ様。
マスターさんありがとうございましたー!
さてと。江藤さんはこの後どうするん?
ウチはミッチーが物販やっとるから、ミッチー待ってから帰るわ。
うーん、私は早めに帰ろうかな。
その場の勢いで来ちゃったから、家に何も言ってないし。
これ以上遅くなると心配かけちゃうかも。
そっか。じゃあ反省会は明日以降やな。お疲れさんー。
うん、お疲れさま。またね。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

|由田≪よしだ≫いす|香≪か≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
|音笛瑠野≪いんふえるの≫商店街のCDショップでバイトする、アイドルが大好きな少女。
ある日クリスに誘われて、伝説のライブ「プリティーヘブン」を目指すことに。
ドジで自分に自信が無かったけれど、アイドル活動をするようになって少しずつ変わっていく。

|叶≪かのう≫クリス 三十三歳
かつて世界を震撼させたトップアイドル。
今は活動を休止して、新たな世代のアイドルを指導することに力を入れている。
新たな伝説を作るライブ「プリティーヘブン」の主催者。
謎多き人物。

|江藤≪えとう≫|萌花≪もか≫ 私立|在義選≪ありぎえり≫高校一年生。
天才的なピアノの腕を持つ江藤|珠里≪じゅり≫の妹でありながら、自分も作曲の才能を持つ。
引っ込み思案ながら心優しい性格で、娘CUTEsのまとめ役でもある。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色