第17話 発見

文字数 2,771文字

夏休み直前、突然主人が仕事で1カ月ほどアメリカに行くことになり、息子2人と私で夏休みを過ごすことになりました。

夏休みはいつもダラダラする子供たち。今年は主人もいないとなると私もだらけてしまいそうだから、しっかり気を締めていかなくちゃ! と心に決めていました。

主人が出発した週はいきなり超ハードスケジュール。
次男は硬式テニス をやっているのですが、日曜日は杉山愛などのコーチをしていたという有名なコーチの早朝練習会に誘っていただき、急遽参加。公共交通の便の悪いところのコートだったので車で送迎。
月曜日は試合。本当は自分で電車で行くはずだったのですが、前日の早朝練習会でちょっと体調があやしかったので朝6時半に車で送迎することに。思いがけず勝ち進んだので昼過ぎまで応援、帰宅後仕事。
火曜・木曜・金曜は仕事。
水曜は長男の学校で面談。熱い中電車で片道1時間かけて行ってきました。
土曜日からは次男が3日連続でまた別のコーチの練習会に参加。こちらはお友達の親御さんが送迎を引き受けてくださったのですが、ずっと知らん顔というわけにもいかないので差し入れを持って陣中見舞い。。。


ここ5年ほどは熱が出たことも、寝込んだこともない私。昨年家族が全員インフルエンザ になりましたが私だけ無傷だったのに・・・金曜日あたりから何だかのどが痛くなり日曜日には微熱、月曜日にはひどくせき込むようになっていました。体がだるくて鼻水もひどい。

あーなんでこんなときに 。 火曜日には熱が38度になってしまったので急遽仕事を休むことにしました。

ちょっと無理しすぎちゃったのかな
寝冷えでもしたのかな
体調管理不足だぁ

とにかく自己嫌悪 。。


息子たちは日頃から「これをやって」と言えばやってはくれるのですが、超がつくほど面倒くさがりでなかなかすぐにはやってくれません。頼んでイライラするよりはと、とにかく最低限のこと・・洗濯と食事、これだけを休み休みやっていました。

その後熱は37度台後半を行ったり来たり。咳と鼻水のために夜中 はほとんど眠れず、医者 には行ったもののなんだかすっきりしません。
子供たちには買い物に行ってもらったり、庭の水遣りをしてもらったりしていましたが、いちいち言わないといけないので、だんだん嫌になってきました。そのうちにもう指示をするのもごゴハンをつくるのもだるくなってしまって
「あんたたち、なんか好きなもの買ってきて食べて 」
そう言って寝込んでしまいました。すると、何を買ってきて何を作っているのか知りませんが、2人でなんだかんだとモメながらキッチンですったもんだしています。

兄「じゃあオレ作るからお前これむいて。」
弟「・・うん」
兄「おいっ なんでここ使うんだよ。
  ここでやったらこれできないじゃん 。」
弟「じゃあどこでするの これ先にやるんでしょ 」
兄「だけど、考えてみたらわかるだろ。水つかうんだからさぁ 」

なんだかよくわからないけど、もうどうでいい・・・勝手にやってくれ


翌朝。咳をしながらキッチンへ。
おや、キッチンがきれいに片づけられている。
ん、なんか音がする。あれ、炊飯してる・・・タイマー炊飯してくれてるんだ 。
えー!まさか子供たちがご飯を炊いておいてくれるとは 。
そこへ長男がやってきたので
「あんた、ご飯炊いてくれたの?」
「うん、もう冷凍ごはんなかったから。でも、タイマー炊飯のやりかたわからなかったからA(弟)にセットしてもらったんだけど。」
いつもはおとぼけな長男なので、びっくりするやらうれしいやら。
「ありがとう、ありがとね。キッチンもきれいになってて、すごく助かるわ。」
私が言うとちょっとテレくさいのか
「ま、あのままってわけにはいかないでしょ 。」

よく言うよ、お前の部屋メチャクチャじゃん
ふふふ


そしてその晩、少し熱も下がってきたしさっぱりしたいな、とお風呂 をわかしてもらって入りました。湯船に入っても少し寒気がしたので

ありゃ、ちょっとまずいな。よく温まらなければ・・・

と少し長く入ったのがよくなかったようです。風呂場で体を拭いていたらだんだん立っていられなくなってきて、あわてて脱衣所に出るとそのまま倒れこんでしまいました。
最後の力をふりしぼって下着を着てタオルにくるまると扉を開けて
「ポカリ・・ポカリスエット持ってきて・・」
消え入りそうな声で言うと、たまたまリビングのドアが開いていて気づいた次男が飛んできました。
「どうしたの!!」
「わかんない・・立てない」
「にいちゃん!!にいちゃん!!」
「なんだよ、なんか虫でも出た?」
二階にいた長男が面倒くさそうに降りてきました。
「母さんが!母さんが!」
泣きそうな声で次男が言うと、廊下に寝そべってただ事でない様子の私を見て長男は
「脱水症状でも起こしてるのかな?お前ポカリ持ってこい。」
そう次男に言うと自分は脱衣所の扇風機を回し、
リビングと和室の扉を全開にしてエアコンをかけ、脱衣場に冷気を入れてくれました。そして冷蔵庫から保冷剤を持ってきて脇と首筋にはさんでくれました。
次男の持ってきてくれたポカリスエットを飲もうとすると、両手がしびれていることに気がつきました。
「あれ、手がしびれて動かない・・起き上がれないよ・・」
するとストローを持ってきてくれて
「少し塩を入れた方がいいんじゃないかな??」
長男に塩を足したポカリを飲むように言われました。
動かない手を必死に動かして少し飲みましたが、全身がだるくて重くて。私が目を閉じてしばらく動かないと次男が緊迫した声で
「母さん!!母さん!!!」
と呼ぶので
「大丈夫・・意識はあるから・・・」
と言うとすこしホッとしたように
「ポカリ飲まなくちゃ。ねぇ飲んで !」
と心配そうに声をかけてくれました。
その間長男は私の症状をネットで検索。
「よくわからないけど、どうも熱性失神みたいな感じかなぁ。もともと具合悪くて少し熱中症っぽくなってたところにお風呂に入って、毛細血管が開いたから貧血ぽくなったのかなぁ?」
とのこと。
その頃には手のしびれも少しずつ取れてきていたので私も大丈夫そうだと思い、しばらくそのまま横になることにしました。


いやぁ、今回は自分でもびっくりでした。こんなに風邪が長引き、こじれたようにひどくなるなんて思いもしませんでした。
子供たちにも迷惑をかけてしまいましたが、日頃みているとマイペースで全く役に立ちそうもない長男が意外とできるんだということ知って、ちょっと安心しました 。
一方日頃は人当たりもよく器用でよく間に合う次男が、倒れた私の横を片時も離れず動揺した様子で
「お母さん、ポカリ飲んで、飲んで 」と言い続けていたのがなんだか「かわいい」と思った瞬間でした。

たまには具合悪くなってみるもんですね 。
子供たちの違う一面が見えました 。


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