第4話 息子の心配

文字数 2,440文字

長男が生まれるのに合わせて購入した4WDのステーションワゴンを急遽買い替えることになりました。購入してまだ5年くらいだったのにこの車、買ったときからいろいろありまして・・・

もともと買う前からディーラーの対応に疑問や怒りがいっぱいだったのですが、でもどうしてもこの車に乗りたかったので予算オーバーだったにもかかわらず、一生懸命にお金を工面して買いました。ところが・・・・

この車、サンルーフだけつけたかったのに、サンルーフとABSとオートクルーズがセットということでオプションでン十万取られ、それなのにこのサンルーフから水が漏れ(当然無償で修理してもらいました)、1回目の車検が終わったお正月にはマフラーが破損し(おかげでその年のお正月はバリバリとうるさい車で帰宅するハメに・・・)

翌年のやはりお正月に出かけた帰りの高速道路では

バンッ

という大きな音とともにコゲ臭いにおいがしてきてあわてて路肩に停めてボンネットを開ける始末。しばらくあれやこれやと見てみましたが、エンジンやタイヤには異常はないようなのでおそるおそる家 まで帰宅。後日調べてみるとクーラーのファンベルトが切れていました・・・もう唖然!!でした。
なぜか正月になると故障するこの車。

ふざけるな!

とばかりに怒り心頭。もう危なっかしくて乗ってられない、と主人と相談して買い替えることにしました。でも、まだしばらくは乗るつもりだったのでお金が・・・
次に買う予定の車は当然別の自動車会社だったので、下取りが安く(タイヤも変え頃だったし・・)どうしようかと悩んでいると、主人の友達が勧めてくれたのが車買い取り店 でした。
ダメもとで査定してみれば、と言われさっそく近くの店へ行ってみました。

某チェーンの車買い取り店は小さな事務所でしたが、小奇麗に手入れされていて感じのいいお店でした。
「いらっしゃいませ!!」
元気よく迎えてくれたのは、まだ20代~30代くらいの愛想のいい男性2人でした。ファンベルトが切れていることと、タイヤが減っていることを告げてさっそく査定に入ってもらいました。
当時幼稚園児で落ち着きのない長男に飴をくれたり、事務所においてある会社のキャラクターの人形を貸してくれたりとサービスもマンテンでした。

そして・・・しばらくして出された査定額に私も主人もビックリ!!だって下取り額より30万円くらい高かったんです!!
詳しく話を聞くと、この車はオークションに出されるのだとか。この車のように年数がたっていなくて距離を走っていなくて(うちは通勤には車を使っていないので)太平洋側のナンバープレートがついている4WDを雪国 のオークションに持って行くと、すごくいい値がつく可能性が高いのだそうです。

・・・でも、うちの車クーラーのベルト切れてるし、タイヤの溝あんまりないけど

「そんなことぜんぜん問題ないんですよ。全部ウチでなおしてタイヤも他の車のはかせちゃうんで。
もしボディに傷がいっぱいあったとしてもそんなのもウチでなおせちゃうんで。大事なのは車本体なんですよ!!」

なるほど。ディーラーとは違うんだ。

お互いの利害関係が一致したので買い取り店で車を売ることにしました。新車の購入が決まったらまた来ると言い残してさっそくディーラーへ。
下取り車なしでの交渉だったので割引率は多少悪かったのですが、そんなことものともしませんでした。だって!!買い取り価格高かったんだもん 。そして新車の引き渡しの日時が決まるとさっそく車買い取り店へ。

ただ、ひとつだけ気になることが。売ると決めたら車検証は買取店に渡して、私たちはそのコピーで過ごすことになること。
「なんだかちょっと心配よね。 」
「まぁ、名の通ってる買い取り店だから大丈夫だよ。 」
「でも、車検証あったらいろいろできちゃうよね。 」
「みんなそうやって売ってるわけだから・・・でもまぁあんまりいい感じではないなぁ。 」
車を初めて買い取り専門店で売ることになって、私と主人は夜そんな話をしていました。

そして新車の来る1週間ほど前に車検証を渡すことになりました。
「いらっしゃいませ 。」
「あの~車検証もってきたんですけど。」
「はい、ありがとうございます。おかけになってお待ちください。」
書類をそろえて戻ってくると、店員のお兄さんは主人に説明を始めました。その横で私は二男を遊ばせ、長男はもらったオレンジジュースを飲んでいました。

「では、車検証をお願いします。」
主人が渡そうと鞄をひらくと、ふいに長男がオレンジジュースを飲みながらため息をついて
「はぁ~。でもほんとにダイジョウブかなぁ。」
とつぶやきました。
それをきいていたお店のお兄さんがにこやかに
「ん?何が?何がダイジョウブじゃないの?」
とたずねました。すると長男は
「だってさ~

持ってっちゃうんでしょ? シンパイだなぁ~」
よくわかりもしないような単語をたどたどしく言いながら難しい顔をして、不満げにつぶやいたのでした。

お兄さんは一瞬絶句。私と主人は赤面 ・・

あーこの子、私と主人の会話をきいていたのね。
やだー私たちが家で言ってたってバレバレじゃん

「この子ったら何言ってるの~」と、わたしがあわてて取り繕うとした次の瞬間。

「大丈夫だよ、全然心配いらないから。お兄さんたちがしっかり お預かりするからね。だって大事な車だもんね。」
最後のほうは私たちの方を見ながらお兄さんは一生懸命に答えてくれました。

すみません。。。 こんなに高く買い取ってくださったのに・・・

もう、いたたまれない気持ちでした。そして笑ってごまかすしかなかった私たちでした。

冷や汗 をたっぷりかかせてくれた当の長男は
「ふーん。そうなの。」
とたいして興味もなさそうに、残りのジュースを飲みほしていました。

そんな長男もじきに免許が取れる歳になります。早いものですよね、時が過ぎるのは。
もうすぐ君にもわかるよ、父さんや母さんのそのときの気持が。自分の車を持ったらね 。






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