第12話 魔法のパン

文字数 1,006文字

昨日食べていたスナック菓子が残ったので、袋の口を留めようと次男は輪ゴムを取りにキッチンへ。引出しを開けて輪ゴムの入っているプラスチックケースの中から輪ゴムを取りながら
「ここに入っている輪ゴム、ずっと入っているわりには劣化しないね」
とひとこと。
「え、だってそれずっと同じ輪ゴムじゃないよ。使ってなくなったら別に買い置きしてあるところから補充してるんだから。まさか何年も同じ輪ゴムだと思ってたの?」
「え あ。そうだねえ・・あはははは 」
照れ隠しに笑っている横顔をみながら思い出したことがありました。

そういえば・・・
あれは次男が低学年の頃だったでしょうか。当時帰宅の遅かった主人が、中にマーガリンが入っているロールパンで3個パックになっているものをよく買って帰っていました。
夕飯は会社の食堂で夕方食べるので、夜帰宅する頃には小腹がすいてしまうのです。それでそのパンをひとつ食べたりしていました。
残りは翌日にでも食べようとカウンターのカゴの中に置いていました。すると学校から帰って来て目ざとくそれをみつけた次男が
「たべてもいい?」
と、よくおやつに食べていました。
次男が好きでそのパンをよく食べると知ると、主人はしょっちゅう買ってくるようになり、その頃そのロールパンが我が家に切れることはありませんでした。

いい加減あきるかな?

と思っていたのですが、次男はずっと食べ続けていました。

そんなある日のこと。
いつものように次男がパンを食べながら妙に深刻な顔をしています。そして思い切ったように私に話始めました。
「お母さん、ぼく不思議に思っていることがあるんだよね。」
「なぁに?」
「このパンさぁ、いくら食べてもなくならないんだよね・・次の日になるとまたカゴの中に入ってるんだよ。」
わたしは一瞬びっくりしましたが、次の瞬間すべてを察知して大笑いしました。

次男がパンを食べてなくなると主人が買い足すわけですが、でも主人が買ってくるところは次男は寝ていて知らないわけで・・朝起きるとパンは増えている、となるわけです。

その当時は幼くて、目をくるくるさせながら真剣に話す姿がかわいらしくて
「こどもって、フフ」
とほほえましく思っていたのですが・・
今はもう学年も上がってるので

「あのさ、もういい加減その無尽蔵でなんか出てくるとか、年とらないとかいうゲームの世界みたいな発想やめない?」
すると次男は
「いいのいいの~」
と私の心配もどこ吹く風。
やれやれ





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み