第7話 サバのよみかた

文字数 1,377文字

次男が小一のとき。
その頃は毎週同じ曜日、同じ時間に耳鼻科 に通っていました。その耳鼻科は予約制だったので待ち時間はせいぜい20~30分で待合室もそんなに混み合ってはいませんでした。大体いつも本を読みながら順番を待っていました。

その日も次男と二人、本を見ながら待っていました。すると次男が突然思い出したように
「Mちゃんのお母さん、Mちゃんのお父さんより1歳年上なんだって。」
と言いました。

Mちゃんのママは長男がお腹にいた時に母親学級で出会って、それからの仲良しママです。偶然下の子も同じ学年でその子がMちゃんです。
「そうみたいね~Mちゃんのママ、お母さんの2つ上だよ。」
なにげなく私が言うと、
「お母さんいくつ ?」
唐突に息子が聞きました。
私は友達同士で話しているときなどわりとあっさり歳を言うほうなのですが、なぜかこのときは口ごもってしまいました。
し~んとした待合室に7,8人の人がいます。なぜここで自分の歳を暴露しなくてはならないのか・・・私が躊躇していると
「ねぇ、い・く・つ・な・の 」
待合室に息子の声が響きました。
「さ、30・・」
とっさに私は答えていました。
ホントは37歳だったのに・・・
「ふ~ん、そうなの。じゃあMちゃんのママ32歳なんだぁ」

・・・そういうこと計算するなよ 。

「あ、本全部読んだの?続き、おかあさんが読んであげようか?」
私はひきつったように笑って話をそらしました。

しばらくして私はそんな会話があったことなどすっかり忘れていました。
ある日、テレビ を見ていると次男が、
「ねえねえ、この人かあさんと同じ歳だよ!」
「え~そんなはずないよ。この人若いモン」
「だって、30歳て言ってたよ。」
「!!!!」
こいつ、あの話覚えてるんだ・・
「あら、そう?さすが芸能人はきれいね~」
平静を装いながらも冷や汗がタラ~ 。どう見ても同じ歳には見えないと思うのですが、そこは1年生。怪しむ様子もなかったので結局そのままにしてしまいました。

その年の私の誕生日。
絶対にその話題が次男の口から出ると思い、主人と長男に告白しました。二人は大笑いした後あきれていました。
案の定、次男は
「31歳の誕生日おめでと~ 」
と無邪気な笑顔で祝ってくれました。そして主人に歳を聞くと
「え~じゃあ、かあさんより10歳も上なの?」
次男は驚いたように言いました。
主人が苦笑していると、長男が意地悪そうに
「おまえさ、とうさんとかあさんの干支・・・」
と言いかけたのですが、わたしがにらんでいる事に気づくと口をつぐみました。
その頃の次男はまだ何でも口に出して言ってしまう年頃だったので、とりあえずそのままにしておこうと思いました。

その翌年の誕生日、
「おめでとう~おかあさん32歳だね!」
あ~やっぱりね。。さすがに来年は40歳、これ以上は・・私がつらそうな顔をしてると、主人がニヤニヤしながら
「もうそろそろ無理があるんじゃない?ほんとのこと言った方がいいんじゃないか?そもそもなんで30なんて微妙な歳言っちゃったんだよ。『20』とか言えばあいつも気がついたんじゃないか?」

確かに。あ~私って。

結局そのあと私は次男に実年齢を告げました。
「え~そうだったの!?」
ちょっと不満そうな顔の次男でしたが、

でお祝いしてくれました。
これからはサバをよむときは気をつけよう、と心に誓った次第です 。



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