第2話  はじめての運動会

文字数 1,681文字

長男は2月生まれ で、マイペースな性格。
小さい頃から「我が道をゆく」といった子で、自分の興味がないことには全く無頓着。

幼稚園入園前、公園でみんなと遊んだ後スーパーで買い物したときも、一人の子があるお菓子 を手に取るとほかの子はみんな「自分も!」となるのですが、長男だけはまったく欲しがらず
「買ってあげるよ。」
と私が言っても
「いらない。」
とひとこと。
ママ友達は
「あら~Tくんえらいのね~。」
と。

でも、いいことばかりではありません。
みんなで公園でお弁当 を食べたとき、そろそろ皆お箸を使い始める頃。おりこうで器用なYちゃんが真っ先に持てるようになりました。
ママたちはみんなで
「すごいね!Yちゃんもうお箸なの!」
とほめると、当然ほかの子は我も我もとお箸にチャレンジ。おぼつかないお箸で懸命に食べ始めました。
我が長男は・・・案の定、我関せずでスプーンとフォークでパクついていました。

それからしばらくしてまたみんなでお昼を食べる機会がありました。ほとんどの子がお箸で食べていました。
「Yちゃんのおかげで、うちの子もお箸使えるようになったのよ。」
そんなママたちの会話をよそに相変わらずフォークで食べ続ける長男。
大丈夫、母は気にしておらんよ。いつかはお箸で食べるようになるさ。

こんな長男が幼稚園に年少で入園。
相変わらずのマイペースぶりでしたが、それなりに楽しくは行っていたようです。

秋、はじめての運動会がありました。ある日
「運動会の練習、見に行ってもいいんだって。行ってみない?」
とママ友達に誘われました。
私は当日見ればいいやと大して興味もなかったのですが、「ママ」とはそういうものかも、とも思いご一緒しました。

園に着くとグラウンドでは他学年が練習をしていました。

わが子はどこだ?

と探すとグラウンドの隅で友達とじゃれあいっこ。押したりタックルしたり。

おいおいケンカになるなよ。。。

だんだん本気モードに入りかかった頃、ようやく長男たちの出番。ダンスです。曲は森高千里の〈ロックンオムレツ〉
「これ、かわいいのよ~」
女の子のママが言いました。家でやってくれたとか。

そうなのかぁ、かわいいのかぁ

と少々期待して見ていると円形に並び曲がスタート。

・・・かわいいダンスでした、確かに。でも、我が息子は、ただぼんやり立っているだけ。
「・・・・」
私の中でカチッとスイッチが入りました。
「よし!練習させるぞ!」

なんでいきなりそんな風に思ったのか今もって自分でも不思議なのですが、帰宅するとすぐに〈ロックンオムレツ〉のCDを用意し、ダンスの振り付けを園に問い合わせ、長男と一緒に毎日練習をしました。
マイペースの長男も母の盛り上げムードに押されたのか、彼のダンスもようやく形になりあとは本番を迎えるだけとなりました。

運動会当日、おじいちゃんおばあちゃんも見に来てくれて彼の初運動会が華々しくはじまりました。
玉入れ・・・拾った玉をあらぬ方向に投げてはその同じ玉を取りに行く。
一人で楽しく遊んでいるようだ。いやいや、玉入れはいいんだ。彼にはダンスがある。。
次の競技も、彼なりに楽しそうだ。ルールには則っていないが。
年中のすずわり が終わって次はいよいよダンス。整列して入場。各クラス大きな輪になって踊るのだが、入場してくる長男の様子がどうもおかしい。きょろきょろして挙動不審だ。

どうしたんだろう・・

不安がよぎる。
位置に着いた長男は突然しゃがみ無心に何か拾い始めました。
「!! !!」
なんと長男はダンスの前の競技、すずわりのときにグラウンドに散ったきらきらの紙ふぶきに心を奪われ、熱心に集め始めたのです。
いつか我に返ってダンスをしてくれる・・そんな母の願いもむなしく曲の後半ではみんなの踊る輪からはずれ、広いグラウンドに散ったきらきらを一人集めてまわっていたのでした。

競技が終わると、脱力した母の元へ満足した顔で
「みて~こんなきれいなの いっぱいひろったの~」
うんうん、知っているよずっと見てたからね。

このあとの競技かけっこ で、彼がまっすぐにゴールに向かって走る姿に
「よくやった~ 」
と感動した母でした。




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