第9話 どろんこ大好き

文字数 975文字

次男が1年生のときよく遊んでいたのが、自然大好きっ子のお友達でした。
あるとき、夕方次男が意気揚々と戦利品 を手に帰宅しました。お砂場用バケツに入れられた「どじょう」でした。かわいらしいお髭の口をぱくぱくさせて、なんとも愛嬌のある様子でバケツの中をくねくねしています。
「飼いたい」
と次男がひとこと。
「いいよ。でも、どんな風に飼ったらいいのかなぁ」
とりあえず、ペットボトルの上部を切って水を入れ、その中に。
どんな環境がどじょうくんにはいいのか調べようね、と話していたのですが、翌日、悲しいかなどじょう君は昇天 してしましました。
「またつかまえにいく」
という次男に、
「そうだね 、また捕まえようね」
と話ました。

数日後、一緒にどじょうを捕まえた自然大好きっ子のママに道で偶然お会いしました。いい経験をさせてもらったお礼をと思い、ご挨拶しました。
「こんにちは 先日はありがとうございました。
どじょう捕まえられて大喜びで帰ってきたの。でも残念ながらすぐ死んじゃって・・また捕まえに行こう、て話してたの。この辺りだとどこにいるの?」
「いえいえ、うちの子が大好きなもので付き合せちゃったの。えっと ・・公園のところにいるんだけどね・・」
なんか言いにくそうなママ。
「?」
「・・・あのね、公園の下のグラウンドの側溝をはぐるの・・」
「側溝のフタってはぐれるの?」
「うん、何箇所かだけね」
さすが、よくご存知だ。
「・・でもね、すご~く汚いの。きっとびっくりするわよ。どじょうってね、汚いところにいるのよ・・だからあんまりお勧めできないわ・・」
「そ、そうなの・・」
ちょっと想像して息子が捕りに行こうと言ったらどうしようか 、と少し迷いました。

でも、行きたいと言えば行くしかない!!

その日から覚悟を決めて、息子からのアプローチを待ったのですが、意外にもそれっきり息子からはどじょうの「ど」の字もありませんでした。

息子は早くも次の遊びに夢中になっていました。今度は公園の斜面を掘ってみんなで「ダム」を作っていたようです。
毎日Tシャツもズボンもどろどろにして帰ってくるのでやれやれ、と思ってはいたのですが。

通りかかったママ友達からの情報によると、ゴミ箱からカップめんのカラを拾ってきてみんなで大量の水を流していたとか・・・
あは・あははは・・
どろんこの魅力に取りつかれていた次男でした。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み