第14話

文字数 832文字

『ヨシツネくん……』



妖魔の声が藤沢さんごの声に戻る…



「さんご、お前は本当はこんなことするヤツじゃねェよ… 元に戻る方法を俺たちと考えよう?」



『ヨシツネくんは私を許してくれるの?』



「ああ、許すとも… お前は辛かっただけなんだ… もう誰のことも恨まなくていい…」



『ありがとう、ヨシツネくん… わかった、私もうこんなことやめる…』



藤沢さんごは俯きながら小刻みに震えている…

肩を震わせて泣いているようだ…



「さんご……」



ヨシツネが藤沢さんごに近付く…



『………などと言うとでも思ったか? バカめ!』



次の瞬間、死角からの触手がヨシツネを貫く…

触手は背中から心臓のあたりを貫通していた。

それは明らかに致命傷だった。



「ヨシツネーーーッ!?」



ジュンは串刺しにされたヨシツネに呼び掛けるが返事はない…



『ふははは… 本当にバカな使い魔よのう… ではこいつから先に取り込んでやるか…』



「バカはあなたですわ! 私が何にも考えずに逃げ回っているとでも思っていたの!?」



『なにィ!?』



ジュンは右手を大地に置き魔力を流し始めた…

するとそれまで隠れていた巨大な魔法陣が姿を現した…



魔法は強大であればあるほど発動までに時間がかかる…
そこで死神ジュンは(あらかじ)め地面に魔法陣を描き、発動までの時間を短縮したのだ。

さらに妖魔との闘いの最中、逃げ回っていると見せかけ、巧みに妖魔を魔法陣のところまで誘導した。

今や魔法陣は妖魔を中心に捉え、檻のように取り囲んでいた。



「汝… (いにしえ)の契約に(したが)いて我が命に(こた)えよ… 我の敵は汝の敵、煉獄(れんごく)の業火にて討ち滅ぼさん眼前の敵を……」



死神ジュンの呪文詠唱が始まった…
それに呼応して魔法陣が強烈な光を放ち始める…



「骨まで焼け落ちろ!このクソッタレ妖魔!!」



ジュンが呪文を唱え終わると、魔法陣から巨大な炎の柱が立ち上がった。

妖魔は逃れようと触手を無茶苦茶に振り回すが、魔法陣の中から出ることは出来ない。

やがて空気を切り裂くようなおぞましい悲鳴をあげながら、妖魔は炎の中に消えていった………



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