第13話

文字数 955文字

「なんだよそれ! 救う方法がないってどういうことだよ!?」



「じゃあ、あなたコーヒー牛乳の中からコーヒーだけを取り出すことが出来る? これはそういうことですのよ!」



「わっかんねーよ、そんな例え! さんごは妖魔に喰われたわけじゃねェ! 助け出す方法がきっとあるはずだ!」



「諦めなさい! あそこまで妖魔と同化してしまっては、藤沢さんごを救い出す手段なんてありませんわ!」



「ダメだ、あいつは悪くない! そんなやつを討つなんて間違ってる! 俺には出来ない!!」



「じゃあ、あなたはそこで見てなさい! この妖魔は私一人で狩りますわ!」



そう言って死神ジュンは、妖魔となった藤沢さんごに向かって飛び込んでいった。



『ふっ、話し合いは終わったのか? 待たされ過ぎて退屈したぞ!』



妖魔は死神ジュンの攻撃を受け流しながら軽口を叩く…

既に多くの人間の生命エネルギーを取り込んだため、今や力では死神ジュンを上回っているようだ。



妖魔は物質化して触れることが出来るほど濃い呪いのオーラを身に纏っている。

呪いのオーラはまるでタコやイカの触手ように動き回り、縦横無尽に死神ジュンを攻め立てる…

ジュンは触手からの攻撃を防ぐのに精一杯で、妖魔本体に攻撃を与えることが出来ない…



「くっ! もう少しで所定の位置だというのに… こいつ意外と手こずらせますわね!」

思わず死神ジュンは悪態をつく…

次の瞬間、触手の先が鋭利な刃物のように変化し、一斉にジュンに向かって突き進む…

ジュンはかろうじてこれをかわすが、触手の一本がジュンの肩のあたりを貫いた。



「がぁああああああっ!!」



焼けるような痛みにたまらず悲鳴を上げる死神ジュン…

ジュンを貫いた触手はそのままジュンを身体ごと持ち上げる…

まるで空中に(はりつけ)にでもされたかのような姿勢で妖魔と対峙するジュン…

触手に貫かれた場所が紫色へと変色し、しかもそれが徐々に広がってゆく…



『お前も我の中に取り込んでやろう… お前のその膨大な魔力、取り込めば我は無敵となれるだろう!』



妖魔と同化した藤沢さんごは勝利を確信して高笑いする…



「やめろぉおおおっ! 」



そこにヨシツネが割って入った。

ヨシツネは自らの羽根を硬質化し、死神ジュンを貫いていた触手を切り落とした。



「もうやめろ、さんご! お前がなりたかったのは、本当にそんな自分なのか!?」




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