第3話

文字数 926文字

死神ジュンはいつもの黒いローブに着替えて窓から飛び出した。

一方ヨシツネは本来のカラスの姿に戻ってジュンの横を飛んでいる。



空から見下ろす町は、不自然なほど通りに人気(ひとけ)がなかった。

無理もない…
原因不明の昏睡事件はいまだに解決していないのだ。

噂に尾ひれがついて大きくなり、今や町はパニックに陥っていた。

学校は閉鎖となり生徒児童たちは自宅待機となった。



ジュンたちが向かっている神代高校も学校閉鎖となっているはずだった。



しかし近付くにつれ、屋上に女生徒らしき人影が確認できた。



死神ジュンは一瞬その女生徒からの視線を感じた気がした。

しかし今は並の人間に死神ジュンの姿を視認することはできないはずである。



そうこうしている内に女生徒は、屋上のフェンスを乗り越え建物の(ふち)に立った。



次に女生徒が何をするか!?
それは誰の眼にも明らかだった。



「ヨシツネ! 行きなさい!!」



死神ジュンがそう命じるのを聞くやいなや、ヨシツネは弾丸のように飛び出した。



その瞬間、女生徒の身体が宙に舞った。



あっという間に女生徒は地面へと吸い込まれてゆく…



もう少しで地面というところで、女生徒と地面の間に黒い影が割って入って、女生徒の身体を持ち上げた…



ヨシツネが間に合ったのだ。



ヨシツネは人間に変化(へんげ)していたが、背中からは黒い羽根が生えている。

ヨシツネはその状態で女生徒を『お姫様だっこ』で抱えていた。



ヨシツネは死神ジュンのように不可視化の魔法は使えない。

今のヨシツネは明らかに『異形の』姿をしていた。



飛び降りた女生徒は気絶していた。

幸い周りには目撃者もいないようだったので、死神ジュンは胸を撫で下ろした。



ヨシツネが女生徒を地面に寝かせると、程なくして女生徒の意識が戻った。



「あれ? 私どうしちゃったんだろ?」



女生徒は飛び降りた前後の記憶をなくしているようだった。あたりをキョロキョロ見回し、自分のおかれている状況を必死に確かめようとしていた。



死神ジュンは不可視化の魔法をかけたままだった。

にも関わらず、再び女生徒と目があったような気がした。

ジュンは女生徒の目の前で手のひらをひらひらと振りかざしてみた。ちょうど『バイバイ』のポーズだ。

だが女生徒は明後日の方角を見つめたままで、全く見えていない様子だった。



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