第12話

文字数 1,078文字

『その願い、我が叶えてやろう!』



そんな声が聞こえた気がした…



「じゃあ、まずこのブタから殺してよ…?」



藤沢さんごがそう心で願うと…『ごとり』という音とともに梨元氏の首が床に転がった…



残った梨元氏の身体は、男性器を藤沢さんごの中に入れたまま、首から血を噴水のように吹き出していた…



不思議と恐怖はなかった…



血まみれになった藤沢さんごは、次に梨元婦人の眠る部屋に行った。



「はじけちゃえ!」



藤沢さんごがそう呟くと、梨元婦人の身体は風船が破裂するように弾け飛んだ…



あっけない…

そしてあまりに脆い…



本当にこれが長年自分を虐げてきた者たちの末路なのか?



「あは… あははははははははははははははは!!」



藤沢さんごは血の海の中、両手を広げてくるくると踊り続ける…



さながらそれは『死の円舞曲(ロンド)』だ…



「あはははははッ! すごい! すごいよこの力!この力があればみ〜んな殺せる! そうだよ… 殺さなきゃ! あいつも! あいつも! あいつも! みんなみんな殺してやるんだ! 私を虐めたヤツは一人残らず殺して! 殺してッ! 殺しまくってやる!!!あはッ…あははははは………」



狂気の舞は尚も続く………



やがて藤沢さんごの心象世界は輪郭を失って滲み始めた…



気が付くとジュンたちは元いた広場に立っていた…



『これで判ったろう? こやつが我を呼び、そして我の力を欲したのだ… もはやこの娘と我は一心同体… 我を滅っせばこの娘も死ぬぞ!』



「くっ、卑怯な!」



ヨシツネが憎らしげに妖魔を睨みつける…



(おっしゃ)りたいことはそれだけかしら?」



ジュンが一歩前に出る…



「何を言われたところで、あなたを狩ることに変わりはありませんわ!」


そう言って大鎌を渾身の力で振るった。

すると先程とは比べ物にならない位、極大のかまいたちが藤沢さんごめがけて飛んでいった。



妖魔は相殺できないと思ったらしく、大きくジャンプして空中に逃れた。

そしてそのまま呪いの矢をジュンたちめがけて放った。


ジュンとヨシツネはこれを左右に飛んで避けたが、呪いの矢が着弾した地面は草が広範囲に渡って枯れ始めた。

それは生ける物全てを呪い殺せるほど濃密な呪いの塊だった。



さらに死神ジュンが反撃しようとしたその時…



「ちょっと待てよ姐さん! 本気でさんごを討つ気か!?」



ヨシツネが死神ジュンを制した。



「ええ、そうですわよ! それが何か?」



「ふざけんなよ! さんごは悪くねぇだろ! つーか、むしろ被害者じゃねぇか! そんなやつを姐さんは殺すって言うのかよ!?」



「いい加減にしなさいッ!」



辺りに響き渡るほどの大声でジュンが叫んだ。



「藤沢さんごを救う方法はもうないのよ!!」



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