第15話

文字数 820文字

ヨシツネは縦も横もない、上も下もない不思議な空間に横たわっていた…



「あれ? 俺死んだんだよなぁ???」



ヨシツネは上半身を起こして辺りを見回すが、見えるのはどこまでも続く紫色の世界だけだ…



『ヨシツネくん…?』



ふと誰かがヨシツネの名を呼んだ…



「誰だ? その声はさんごか!?」



ヨシツネは藤沢さんごを探すが姿はなく声だけが響いてくる…



『ごめんね、ヨシツネくん… 私やっぱり間違ってたよ…』



「構わねぇよ… 誰にだって間違いはある… また一緒にやり直そう?」



『それも遅かったみたい… ごめんね、私ばかで……』



「そんなことねぇよ! ほら、さんご… 出てきてくれよ?」



ヨシツネは両手を広げながら辺りをキョロキョロ見回す…

藤沢さんごの声は遠くから聞こえてくるようでもあり、すぐ近くから聞こえてくるようでもあった…



『ごめんね、私もう行かなくちゃ… でもヨシツネくんは連れて行けないんだ……』



「お、おい…? 行くってどこにだよ? なぁ… さんご…???」



『ごめんね… ヨシツネくん… ちょっとの間だったけど、ヨシツネくんと出会えて私、幸せだったよ…』



「ダメだ、さんご! 行くな!!」



『さようなら、ヨシツネくん… ごめんね…?』



紫の世界は眩い光に覆われ、ヨシツネの視界には何も見えなくなった…





「ヨシツネ! ヨシツネ!」



また誰かがヨシツネの名を呼んでいる…



「ったく… 今度は誰だよ…?」



ヨシツネが目を開けると、そこにはよく知った顔が自分のことを覗きこんでいた…

死神ジュンだった…





どうやら藤沢さんごは、死神ジュンの放った魔法に焼かれながら、最期に自我を取り戻したようだ…

そこで残った力を使ってヨシツネを結界で守りつつ、自らの生命エネルギーを与えて蘇生させたのだ。



ヨシツネは藤沢さんごのいた場所を見つめていた…

そこには僅かな灰が残されているだけだった…



やがて灰は風に吹かれて散り散りになってゆく…



『ごめんね…?』



ヨシツネには藤沢さんごがそう言っているように聞こえた………




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