第1話

文字数 745文字

『こやつは上様の名を(かた)狼藉者(ろうぜきもの)じゃ! エエイ構わぬ、切り捨てぃ!!』



TVでは今まさに暴れん坊上様(再放送)がクライマックスシーンに差し掛かろうとしているところだった。

それを食い入るように観ている死神ジュン。



そして若干もう一名。



「てゆーか、姐さんもよく飽きねぇよな? 毎度毎度おんなじパターンでよォ! 一体これのどこが面白いわけ?」



ややぶっきらぼうな物言いをするこの男の名はヨシツネ。実は死神ジュンの使い魔のカラスだ。

使い魔と言えど、主人から与えられた魔力を行使する事が出来る。

今ヨシツネは人と変わらない姿形をしているが、それは変化(へんげ)の魔法を用いているからだ。



「うるさいですわね! 今いいところですのよ! 黙らないと焼き鳥にして差し上げますわよ!」



「へいへ~い……」

しぶしぶ主人に従うヨシツネ。

下手をすれば本当に焼き鳥にされかねない。

仕方なくヨシツネは暴れん坊上様が終わるのを待つことにした。



「はぁん、今日も美しかったですわぁ~、暴れん坊上様… やっぱり世の中こうでなくてはいけませんわね!」



「はいはい、良かったですねっと…」



ヨシツネはいまだ感動冷めやらぬ、といった感じの主人を無視して、座卓の上に大きな地図を広げた。
地図の上には赤色のマーカーで✕印が何ヵ所も記されている。



「ずいぶんとありますわね?」



✕印の数の多さに、死神ジュンが地図の方へと向き直る。

その表情は先ほどとはうって変わって冷たく、見たものを凍りつかせるような視線は、死神の視線そのものだった。



「ああ、やっぱ姐さんの読み通りだったみたいだぜ。病気にしちゃあまりに数が多すぎる。この事件の裏には…」



「妖魔が関わっている…」



ヨシツネが言おうとした結論をジュンが遮るようにして言った。



「その通り!」



ヨシツネは苦笑いしながらそれを認めた。



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