第10話

文字数 806文字

「ちょ…ちょっと待てよ姐さん! さんごが妖魔なワケねェって! 姐さんだって見ただろ? さんごが妖魔に操られて学校の屋上から飛び降りるところを…」



「ええ、見ましたわ。 けれど、そもそもそれが私たちを欺くお芝居でしたのよ! 私たちはまんまとそれに引っかかったということですわ!」



「いや、しかし…!」



「いい加減にしなさいヨシツネ! 藤沢さんごはもう人間ではありませんの! 妖魔に心も身体も支配された操り人形ですのよ!」



そう言って死神ジュンは、持っていた大鎌を音速を越える勢いで振るった。



鎌から発せられた真空の(やいば)が、藤沢さんごめがけて飛んでゆく…



「!!!」



ヨシツネは我が目を疑った。
まさか自分の主が丸腰の、しかも人間の少女に『かまいたち』を放つとは思ってもみなかったからだ。

しかしヨシツネは更に驚きの光景を見ることになる…



藤沢さんごは右手を前にかざすと、死神ジュンの放ったかまいたちをいとも容易く防いでみせたのだ…



それは人間の少女ができる芸当ではなかった…



『ふ…まんざら馬鹿ではないらしいな、死神……』



その声は藤沢さんごが喋っているように見えるが、深い地の底から響いてくるようだった…



『しかし貴様は少し勘違いしているようだな… 我は別にこの小娘を操ってなどおらぬ… 町の人間の生命力を奪って回ったのは、全部この娘の意志だ… 我はこやつに力を貸したに過ぎぬ…』



「なんですって?」



『ふっ…信じられぬか… では見せてやろう… この娘の心の内側を…!』



その途端、目を開けていられないほどの眩い光が辺りを包んだ…



しばらくすると光の洪水は収まり、ジュンとヨシツネは先ほどまでいた広場とは全く違う場所にいた…

どうやらここは藤沢さんごの心象風景の中らしい…



遠くからお経のようなものが聞こえてくる…

行ってみるとそこは葬儀会場だった…

祭壇にある遺影は二つ…
若い夫婦とおぼしき男女の遺影だ…

その前で小さな女の子が泣いていた…



藤沢さんごだった…




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