第7話

文字数 1,003文字

「ぅぎゃあああああああああっ!! 死ぬぅううううううぅ!!!?」



と、ここで時間は元に戻る。



藤沢さんごの希望で遊園地にやって来たまでは良かったが、初めてジェットコースターなるものに乗せられ、断末魔の悲鳴をあげるヨシツネなのだった。



「あははは、ヨシツネくん叫びすぎ~! 私気になって全く集中出来なかったよ~」



「も、もう二度と……乗らん! に、人間はなぜ…あんな…ものを………!?」



「ん? 人間がどうしたの?」



「いや、こちらのことだ。 気にするな……」



二人はそのまま遊園地でのデートを楽しんだ。
もちろん一方的に楽しんでいたのは藤沢さんごなのだが……

ヨシツネが意外と絶叫系アトラクションに弱いとわかってからは、藤沢さんごが一人で乗車することもあった。

藤沢さんごがアトラクションに興じている間、ヨシツネはそれを近くて見守っていた。



『まるで子供を遊園地に遊ばせに来たお父さんのようだな』


ヨシツネはそんなことを考えていた。

実際、藤沢さんごは子供のようにはしゃいでいた。
ヨシツネの手を引き、遊園地の中をあちらこちらと連れ回した。



あらかたのアトラクションを制覇した頃には、太陽はもうすっかり西に傾いていた。



少し高台になっていて遊園地全体が見渡せる休憩所で藤沢さんごが言った。



「えへへへ、今日はごめんね~! まる一日付き合わせちゃったね」



ヨシツネが「別に気にしていない」と告げると、藤沢さんごは更に続けた。



「小学校の頃の遠足で来た以来なんだよ、ここ。 それでつい嬉しくなっちゃってさ…」



ヨシツネは数日前の藤沢さんごの台詞を思い出していた。



『私ね、小学校の時に両親を亡くしちゃって…』



と、確かに彼女は言った…



おそらく藤沢さんごは両親を亡くして以来、子供なりに大変な人生を過ごしてきたに違いない。



『家族と遊園地に行く』



そんなどこの家庭でも当たり前のことを、藤沢さんごは幼少期に経験することなく今に至ったのである。



「なぁ、明日もお前ヒマか? 良かったら明日も俺と遊ばないか?」



そんな風に自然と言えたのは、ヨシツネの中に使命感だけではない、もっと別の感情が生まれたからかもしれない。



出来ることなら、この少女をもっと笑顔でいさせてやりたい……

ヨシツネはそう思うようになっていた。



「えぇっ、いいの? 嬉し~い!」



そう言いながらその場で小躍りする藤沢さんご……





そんな二人の姿を、上空から冷ややかに見つめている者がいた。



死神ジュンだった………



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