第9話

文字数 760文字

ヨシツネと藤沢さんごが水族館に着いた頃…
死神ジュンは『梨本家』…すなわち藤沢さんごが今現在暮らしている家の前にいた。



「くっ、 全く私としたことが!」



最初にここに来た時に感じた違和感…
その正体が今になってようやくわかったのだ…



ここには『死』しかない…



普通はどこの家庭にもある『人の営み』がここには全く感じられないのだ…
そのことにもっと早く気付くべきだった!



死神ジュンは梨本家に入った。



そこは既に人の領域ではなかった…

家の中は生身の人間が入れば、一瞬で絶命するほど濃密な呪いで満たされている…

死神ジュンでさえ気分が悪くなるほどだ…



それにこの悪臭!?



ジュンが悪臭の元を辿ってゆくと、やがて浴室に辿り着いた…

そこにはジュンの予想通り二つの死体があった…

しかし、それは死体と言うより人間二人分の肉片と言った方が正しい…

浴槽や床にはもちろん、壁にまで肉片が飛び散っている…

まるで人体が内部から爆発したようだ…

とても確認できる状態ではないが、この二つの死体が梨本家の本来の住人なのだろう…



ここは間違いなく妖魔の根城だ…



妖魔は学校を見張り続けるジュンたちを嘲笑(あざわら)いながら、度々ここから町の人を襲いに出かけて行ったのだろう…



今度はヨシツネが危ない!



死神の使い魔として強力な魔力を有しているヨシツネは、食せばかなりのエネルギー源となる。

たぶん妖魔はそれを知った上でこちら側に近付いてきたのだ。



実は死神ジュンはこの結果を半分予測していた…

だから今日の予定の最後に河川敷広場を組み込んだ…



夕方、人気(ひとけ)のない広場なら妖魔との対決におあつらえ向きだ。



相手は数多くの魂を喰らい相当パワーアップしてるはずだ。こちらもそれ相応の準備をしておかないと危ない。



「さて、そういうことなら急ぎませんとね!」



そう呟きながら、死神ジュンは死地となった梨本家をあとにした…
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