その6 実例:小説『ジークフリート・ノート』を改訂してみました

文字数 1,980文字

「その5」では、雰囲気として、
順風満帆で進んでいてもときどきプロットを見直すといい、
的な感じで書いてしまいましたが、
むしろ、順風満帆じゃないときほど、プロットの出番!ということを強調したいです。
ヒツジなんて、1年365日のうち、300日は順風満帆じゃないです。
凪[なぎ]です。
風よ吹けー。
メ~~~~。
うまく行かない。
もの足りない。
本当にこれが書きたかったのかな?
別のことが書きたくて書きはじめたんじゃなかったのかな?
なんて、迷ってしまうとき、
最初に書いておいた「地図」や「海図」、つまり、プロットが手もとにあると、
ちょっと安心できませんか。
初心に帰れ!というやつです。
そして、(ここから先が本論です、)
最初に書いておいたプロットが手もとになくても、ぜんぜんかまわないのです。
行きづまったときの「ストレス解消法」、
それが、プロットの練り直し!
私の長編小説、『ジークフリート・ノート』。
プロットを練り直しながら改訂していった、その過程を、ちょっと書いてみますね。
あれは2020年の1月末。
おでん屋さんで飲み会をしてました。朗読劇『ハムレット』の打ち上げでした。
そのとき、ある友だち(若くて美人!)が言ったのです。
「ハムレットもマザコンですけど、『白鳥の湖』の王子さまも相当マザコンですよねー」

そのときは「あはは、そうだねー」で終わったのですが、
新型コロナウイルスの圧迫がじわじわと来はじめた3月初旬、
なぜかヒツジは、この頼りない王子さまのお話が書きたくなりました。
というか、彼が自分からやって来て、話しはじめたのです。
「助けてください、誰か」って。

浮かんでくるままに1週間くらいで書きあげた初稿は、400字詰め原稿用紙で約80枚でした。
ちょっと長めの短編、せいぜい中編というサイズです。
書きあげたら、主人公たちがとても好きになってしまって、
別れたくなくなりました。
で、考えました。
――これ、がんばって3倍の長さにしたら、小説の新人賞に応募できるサイズになるんじゃない?
じつはこの時点でヒツジ、200枚以上の小説を書いたことが、まだなかったんです。

ただ、ずっと戯曲(舞台用の脚本)を書いてきていたので、そっちのサイズ感は身に付いていました。
いまどき、上演時間は、2時間を超えてくるときついです。
かと言って30分じゃ人を呼べません。
1時間強から2時間弱の間。

戯曲と小説ではフォーマットがちがいますから、正確には比べられないんですけど、
その差もふくめて、「1回の体験」で把握できる長さが、
原稿用紙100枚前後。

ちなみに私の『オフィーリア・ノート』は97枚、『レディ・マクベス・ノート』は63枚です。
これらもだーっと書いていって、書きあがったらやっぱりその「ひとつかみ」のサイズでした。
300枚は、その3倍ってことです。
3作目の『ジークフリート・ノート』を、どうやって3倍にしたかというと、
とにかく最初のページから、1ページずつ、上書きしていきました。
ささっと塗った塗り絵を、もう一度、輪郭のすみずみまでみっちり塗り直すような感じで。

そのとき初めて、プロットを作りました。

もともと3つのパートからできていて、
各パートのエピソードに、番号がふってありました。
そこに、ひとつずつ、タイトルをつけていきました。
こんな感じ。
【ビフォー】

 (1)
 (2)

【アフター】

第一幕 ロットバルト
 第一曲 テンポ・ディ・ヴァルス(ワルツ)
 第二曲 情景(アンダンティーノ)

バレエ『白鳥の湖』の、ほんとの曲名を当てはめていったんです。
この作業にはめちゃくちゃ熱中してしまいました!
そして、
各エピソードを何枚にふくらませ、
エピソードそのものをあといくつ足せば、
300枚になるか計算して、書いていきました。

たしか、1エピソードが平均5枚で、16エピソードとかだったので……
5x16=80
これを3倍の量にするには、まず、それぞれのエピソードを単純に3倍の文章量で書く。
15x16=240
これでもまだ300枚には足りないので、エピソードの数じたいを増やす。
15x20=300

よし!
各エピソードを3倍の濃さで書いて、かつ、エピソードをあと4つ増やせばいいんだ。

めちゃくちゃ単純計算でした。
これを実行しました。
こうして書きあがった第二稿は、めでたく300枚を超えました!
そのときは、
「やったー、完ペキ! えらいぞ私!」
と思ったのですが……
ですが……
ある小説賞の〆切日に、レターパックライトで投函して、数日後。
すでに、ちょこちょこと、手もとの文書ファイルを直し始めるヒツジ。
あのままだと一次通るか通らないかだな。
落としてくれないかな。
落としてくれないかな……!!
と、祈りはじめる始末。
で、その祈りが天に(というか下読み審査の方に)通じて、
ぶじに落とされまして。
長くなってきたので、次ページに続けますね。
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登場人物紹介

ミミュラ

このチャットノベルの管理人。ときどきアマビエに変身する。
ヒツジのくせに眠るのが下手。へんな時間に起きてしまったり寝てしまったりする。
お弁当は好きなおかずから食べる派。

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