プロローグ
文字数 465文字
「証拠が必要かしら? 愛と一緒よ」
どうだろう。
ぼくには肉体に依存しない愛の方が恐ろしい。
相手が死んでいても成立するからだ。
確からしいという直感に、愛情に、ぼくらは簡単に溺れる。
誰かを巻き込んで。
信じることは他人を犠牲にして行うことではないのだ。
証拠によらない証明に正義はない。
普通の人はね。自分は死なないという夢で命を繋ぐのよとその人は笑う。
「解かれてしまうトリックよりも、証明できない事件の方が魅力的だわ。あの子の能力みたいに」
「それではミステリーゲームと呼べませんよ」
「そうね。神の力を幻視するゲームだわ」
ソルベが口の中でとろけて、ようやく現実に帰ってきたという実感が湧いてきた。
「あなたはミステリーがお好きかしら?」
訊かれて、ぼくの手が止まる。
深湯甕 の人間は往々にしてミステリーに興味がない。
彼らにとっては謎 ではないからだ。
長きにわたる選別によって磨かれた才覚。
証明のない才能というものは圧倒的で理解できるようなものではない。
悲しいまでに、ただ感じるだけ。
ぼくは答える。
「好きですよ、ミステリー。凡人 の戦い方を知れますから」
どうだろう。
ぼくには肉体に依存しない愛の方が恐ろしい。
相手が死んでいても成立するからだ。
確からしいという直感に、愛情に、ぼくらは簡単に溺れる。
誰かを巻き込んで。
信じることは他人を犠牲にして行うことではないのだ。
証拠によらない証明に正義はない。
普通の人はね。自分は死なないという夢で命を繋ぐのよとその人は笑う。
「解かれてしまうトリックよりも、証明できない事件の方が魅力的だわ。あの子の能力みたいに」
「それではミステリーゲームと呼べませんよ」
「そうね。神の力を幻視するゲームだわ」
ソルベが口の中でとろけて、ようやく現実に帰ってきたという実感が湧いてきた。
「あなたはミステリーがお好きかしら?」
訊かれて、ぼくの手が止まる。
彼らにとっては
長きにわたる選別によって磨かれた才覚。
証明のない才能というものは圧倒的で理解できるようなものではない。
悲しいまでに、ただ感じるだけ。
ぼくは答える。
「好きですよ、ミステリー。