第5話 その顔は見られている

文字数 1,257文字

 科学スキル:指紋や毒物検査キットなどを
       いくらでも召喚できる
       召喚したキットは消えない

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ヘッドセットには表情をとるためのカメラがある。

そのためアバターにはかなり細かくプレイヤーの表情が反映されていた。
しっかり観察すれば、現実でスマホをいじっていたり、スイッチしていることももわかるという。

宣伝のような瞬きしないアバターや表情を硬めに設定する事もできる。

おそらくは硬めに設定している化狐(ばっこ)の顔には、抑えきれない怪しい笑みが浮かんでいた。

ビリヤード台の置かれた部屋でそれぞれ腰を下ろす。

潮尾(うしおび)が飲み物とお菓子を運んで来る。

グラスを傾けながら、化狐は語り出した。

「自分はね、このゲームが大好きなんだ! だから面白くしてくれる人間も大好きだ」

「僕もこのゲーム好きだよ」

無邪気に同意する閻羅(えんら)

ぼくは黙ってコーヒーが届くのを待っていた。

化狐の声は熱を帯びていく。

「君は生まれながらの探偵……いや警察だ! 君と話した人間は犯罪を犯すという噂は本当かい?」

「だったら山田くんは犯罪者だよ」

「違うのかい?」

冗談めかして化狐はぼくを見た。

「残念ながら」

「残念だよ。SNSの情報を真に受けた自分が! あははははっ!」

酒は禁止だが、酔っ払い並にハイになっていた。

「自分は姓牙淵(かばねがふち)さんのファンなんだ。彼女がミスサイティドミステリーを守ってくれたから。君たちも知っているだろう?」

ぼくたちはうなずいた。

このゲームは動機と命の希薄さから探偵対犯人の直接対決になりがちで、複数の事件が同時に発生し、殺人合戦となることもザラである。

『これは殺人を学ばせるゲームだ』

ミスサイティドミステリーへの議員による糾弾が始まり、苦境に立たされていた時期がある。データによる反証が通じない相手に対して、姓牙淵は感情に訴えかける演説で多くの支持者を得た。人気の主催者として顔出しで公聴会に出向き、ニュースにも出演している。

ほどなく筆頭に立って非難していた議員の落選で規制運動は沈静化した。

今にも泣き出しそうな声色で化狐は断言した。

「自分はファンだ。だからわかる。あの人は姓牙淵さんじゃない!」

閻羅は興味津々でたずねた。

「入れ替わっているってこと?」

「わからない……。なにか計画が動いてるのかもしれない。でもそうじゃないとしたら? 耐えられないんだ!」

通常のプレイヤーなら殺して変装かどうか確かめたいところだろう。しかし、姓牙淵のスタイルとボイスはよく知られているのだ。スキルを使わずとも最初の設定で化けられる。

くわえて本物かはさておき、主催の姓牙淵には手出しができない。

姓牙淵は中肉中背。30代の目鼻立ちのはっきりした男性だ。

昨日見た中では術中の外観が近かった。報道で見た派手な感じとは真逆だったので姓牙淵を思い出すこともなかったが。

あとは途中参加者の可能性もある。

潮尾にリアルの参加者について質問したのはこのためか。

化狐はなんらかのアクションを起こすだろう。

でもぼくは悠然とかまえていた。

問題はない。
閻羅がいるのだから。
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登場人物紹介

姓牙淵 無黒/かばねがふち むくろ

ゲーム主催者。

術中 百中 / すべなか ひゃくちゅう

シナリオライター

野獣 / やじゅう(フォーヴ)

殺人鬼

医療スキルの達人

半裂 ささら / はんざき ささら

殺し屋

料理スキルを好んで使う

全 音符 / まった のーと

作曲家

ダイニングメッセージの名人

化狐 / ばっこ

翻弄する人

狐ポーズで有名な容疑者

花満 花蘂 / はなみつ はなしべ

死体アーティスト

内田 菊苗 / うちだ きくなえ

サイエンティスト

相棒役が得意

宣伝 第一 / せんでん だいいち

広告の一形態


本拠地 唯 / ほんきょぢ ゆい

探偵

自分以外の探偵を認めず排除する

潮尾 / うしおび

メイド

本業は探偵

深湯甕 閻羅 / ふかえ えんら

悪名高い警察一家の跡取り

権力と資産を背景に警察力を発揮する

山田 / やまだ (深湯 踏絵 / くがえ ふみえ )

閻羅のはとこ

刈耳 尊扉 / かるみ とうと

ミスサイティドミステリーの発案者

閻羅の母

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