第10話 死者は復活す
文字数 2,143文字
モニター制限:主催者が視聴者の見る
モニターを決めている
+++++++++
「眠くなってきちゃったよ」
閻羅 はあくびを繰り返している。
2日目の朝、円卓に全員が揃わなかった理由の1つは閻羅と付き添いのぼくが部屋から出てこなかったからだ。
閻羅の朝は遅い。
今日は事件がおこるとわかっていたから仕方なく早起きをしたが、普段はまだ寝ている時間だ。
天徒は何も所持していなかったので、半崎の部屋の確認は内田に行かせる。
自分で調べないのかって?
閻羅は探偵ではない。警察だ。それも指揮官だ。
天徒が地下室に入ったのを見届けて、みんなはそれぞれの部屋へと戻っていった。
このタイミングでモニター制限とは。
探偵役が絞られてくると謎をとっておくために探偵役や相棒、または被害者にも加害者にもならなさそうな人物の視点に絞られることがある。
探偵役に付き添うぼくが選ばれたのは納得だが、これからしばらくは退屈な画になりそうだ。
部屋に戻ると閻羅はすぐにベッドにダイブした。
時間が過ぎていく。
リアルタイムなんて考えついてもやらないだろ、普通。
パニック映画並みの殺戮でもなければなかだるみするに決まっている。
何を映そうかと思案していると、ビシャアンッと激しい音がした。
部屋全体が揺れて、天井にドス黒い雲が立ち込めて豪雨となる。
狙いは明白だ。
ぼくはそばにあった椅子を手に取って、思い切り窓ガラスに叩きつけた。
破壊ゲージはごくわずかしか減らない。
本来の強度じゃない!
ベッドから飛び起きた閻羅もドアノブを回す。
窓ガラスは壊れないしドアは開かなかった。
「くそっ!」
すでに雨は膝まで溜まっている。
閻羅はトイレや風呂のドアを開けて周りながら言った。
「熱で固まる何かで接着されてるか、電気式ロックか、膨張させたか」
医療スキルは生物にしか作用しない。
「内田か潮尾 が助けに来るはずだ」
ぼくはバックからクッキーを取り出した。
溺死しそうになってもどちらかが生きていれば蘇生できる。
蘇生後しばらくは体力が少なくてスキルを使えないが、何かを食べれば回復するのだ。
体力に差をつけ、交互に蘇生して助けを待つしかない。
そこで窓の外に宣伝がいることに気がついた。
窓を叩くぼくに向かって宣伝は腕を振った。
る、る、るるばん!
殺す……!
すると、ばん、と窓ガラスに額をつけて、宣伝は閻羅を指差した。
その指を引っ込め、親指を立てて首を掻き切る仕草。
次にぼくを指してからOKマークをつくった。
なんだ? なにを言いたいんだ?
「僕が死ねばフミくんは助けるってことだよ」
「何考えてんだよ!」
「本拠地 さんだね、あの人」
「はぁ?」
水は胸の高さまで来ていた。
ぼくらはデスクの上に乗って高さを確保する。ぼくは右腕一つで椅子をふるい窓を叩き続けた。
「閉じ込めたのはあいつか?」
「違う。術中 さんだよ。もとい、姓牙淵 さん。目を瞑って寝たふりをしたままこの部屋に細工をしたんだ。鍵や開閉部を固める素材は最初の半崎さんが視覚外で作って、円卓の下で受けは渡したのかな。後はタイミングを見て雷を落とし、雨を降らせる」
ステージを知り尽くした主催者とはいえ、そんなことが?
「とにかく生き残るぞ! すぐに内田か潮尾がーー」
「このための野獣さんかもよ。減ってる」
カウンターが6人になっている。
マイナス3。
内田と潮尾と野獣の乗り移った誰かが相打ちになったのか?
「最悪だな!」
凄まじい雨音。
水が腰を超えて迫る。窓はびくともしない。
考えろ! 助かる方法を。
そもそも本拠地が約束を守るという保証はない。
持っているスキルは占い。そして人形のようなコミカルな軽いボディ。
ぼくは気がついた。
「あいつ手ぶらじゃねえか!」
ぼくらも窓を破壊するような凶器を持ち合わせてはいないが、スキルはある。
自らの身体を爆弾とすることで、椅子を粉々にできることを野獣がすでに示しているから。
ぼくは閻羅を見た。
「身体を爆発させて窓を壊す」
お互いに深湯甕の人間だから、相手を優先しようとすれば必ず揉めるし譲れない。
ぼくらは2人とも助かる道を選ぶしかないのだ。
閻羅は窓枠を掴んで波打つ水面から膝をだした。
「足一つでいけるかな?」
「いってもらわなきゃ困るな」
重要なのはパワーを貯めて威力を上げること。
野獣のような熟練度には及ばないが、こっちは2人だ。
ぼくは閻羅の右足にエネルギーを送り込み、閻羅は治癒を施すことで内部のエネルギーを抑え込んだ。
加減はわからない。でもやるしかないのだ。
足が光り始める。
方向を絞れなければ2人まとめて死ぬだけだ。
「いくよ!」
閻羅の掛け声と共にぼくは力を込める。
閻羅は治癒をやめ、エネルギーを注ぎ込んだ。
ドオォンとくぐもった音を響かせながら、窓に向かって放たれた爆発は窓を穿ち、水流を震わせた。
破壊ゲージが一気に減った。穴は小さいが十分だ。
閻羅は傷口を塞いでいる間に、ぼくは水に潜って右手で窓枠を握り、大きくなっていくヒビをひたすら蹴る。
すぐにビビが広がり、右足が突き抜けると押し寄せる水を引き連れて身体ごと窓を突き破った。
地面に転がったぼくは宣伝を探す。
立ち上がって警戒するが、逃げた後だった。
ぼくは部屋に戻ってクッキーを手に声をかける。
治療を終えて閻羅が言った。
「1人増えてる」
カウンターが7人になっていた。
モニターを決めている
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「眠くなってきちゃったよ」
2日目の朝、円卓に全員が揃わなかった理由の1つは閻羅と付き添いのぼくが部屋から出てこなかったからだ。
閻羅の朝は遅い。
今日は事件がおこるとわかっていたから仕方なく早起きをしたが、普段はまだ寝ている時間だ。
天徒は何も所持していなかったので、半崎の部屋の確認は内田に行かせる。
自分で調べないのかって?
閻羅は探偵ではない。警察だ。それも指揮官だ。
天徒が地下室に入ったのを見届けて、みんなはそれぞれの部屋へと戻っていった。
このタイミングでモニター制限とは。
探偵役が絞られてくると謎をとっておくために探偵役や相棒、または被害者にも加害者にもならなさそうな人物の視点に絞られることがある。
探偵役に付き添うぼくが選ばれたのは納得だが、これからしばらくは退屈な画になりそうだ。
部屋に戻ると閻羅はすぐにベッドにダイブした。
時間が過ぎていく。
リアルタイムなんて考えついてもやらないだろ、普通。
パニック映画並みの殺戮でもなければなかだるみするに決まっている。
何を映そうかと思案していると、ビシャアンッと激しい音がした。
部屋全体が揺れて、天井にドス黒い雲が立ち込めて豪雨となる。
狙いは明白だ。
ぼくはそばにあった椅子を手に取って、思い切り窓ガラスに叩きつけた。
破壊ゲージはごくわずかしか減らない。
本来の強度じゃない!
ベッドから飛び起きた閻羅もドアノブを回す。
窓ガラスは壊れないしドアは開かなかった。
「くそっ!」
すでに雨は膝まで溜まっている。
閻羅はトイレや風呂のドアを開けて周りながら言った。
「熱で固まる何かで接着されてるか、電気式ロックか、膨張させたか」
医療スキルは生物にしか作用しない。
「内田か
ぼくはバックからクッキーを取り出した。
溺死しそうになってもどちらかが生きていれば蘇生できる。
蘇生後しばらくは体力が少なくてスキルを使えないが、何かを食べれば回復するのだ。
体力に差をつけ、交互に蘇生して助けを待つしかない。
そこで窓の外に宣伝がいることに気がついた。
窓を叩くぼくに向かって宣伝は腕を振った。
る、る、るるばん!
殺す……!
すると、ばん、と窓ガラスに額をつけて、宣伝は閻羅を指差した。
その指を引っ込め、親指を立てて首を掻き切る仕草。
次にぼくを指してからOKマークをつくった。
なんだ? なにを言いたいんだ?
「僕が死ねばフミくんは助けるってことだよ」
「何考えてんだよ!」
「
「はぁ?」
水は胸の高さまで来ていた。
ぼくらはデスクの上に乗って高さを確保する。ぼくは右腕一つで椅子をふるい窓を叩き続けた。
「閉じ込めたのはあいつか?」
「違う。
ステージを知り尽くした主催者とはいえ、そんなことが?
「とにかく生き残るぞ! すぐに内田か潮尾がーー」
「このための野獣さんかもよ。減ってる」
カウンターが6人になっている。
マイナス3。
内田と潮尾と野獣の乗り移った誰かが相打ちになったのか?
「最悪だな!」
凄まじい雨音。
水が腰を超えて迫る。窓はびくともしない。
考えろ! 助かる方法を。
そもそも本拠地が約束を守るという保証はない。
持っているスキルは占い。そして人形のようなコミカルな軽いボディ。
ぼくは気がついた。
「あいつ手ぶらじゃねえか!」
ぼくらも窓を破壊するような凶器を持ち合わせてはいないが、スキルはある。
自らの身体を爆弾とすることで、椅子を粉々にできることを野獣がすでに示しているから。
ぼくは閻羅を見た。
「身体を爆発させて窓を壊す」
お互いに深湯甕の人間だから、相手を優先しようとすれば必ず揉めるし譲れない。
ぼくらは2人とも助かる道を選ぶしかないのだ。
閻羅は窓枠を掴んで波打つ水面から膝をだした。
「足一つでいけるかな?」
「いってもらわなきゃ困るな」
重要なのはパワーを貯めて威力を上げること。
野獣のような熟練度には及ばないが、こっちは2人だ。
ぼくは閻羅の右足にエネルギーを送り込み、閻羅は治癒を施すことで内部のエネルギーを抑え込んだ。
加減はわからない。でもやるしかないのだ。
足が光り始める。
方向を絞れなければ2人まとめて死ぬだけだ。
「いくよ!」
閻羅の掛け声と共にぼくは力を込める。
閻羅は治癒をやめ、エネルギーを注ぎ込んだ。
ドオォンとくぐもった音を響かせながら、窓に向かって放たれた爆発は窓を穿ち、水流を震わせた。
破壊ゲージが一気に減った。穴は小さいが十分だ。
閻羅は傷口を塞いでいる間に、ぼくは水に潜って右手で窓枠を握り、大きくなっていくヒビをひたすら蹴る。
すぐにビビが広がり、右足が突き抜けると押し寄せる水を引き連れて身体ごと窓を突き破った。
地面に転がったぼくは宣伝を探す。
立ち上がって警戒するが、逃げた後だった。
ぼくは部屋に戻ってクッキーを手に声をかける。
治療を終えて閻羅が言った。
「1人増えてる」
カウンターが7人になっていた。