第12話 事件にメロディを
文字数 1,771文字
体力:動くほど消耗し、スキルを使うと
大きく減少する
食事で回復する
+++++++
術中の部屋の前。
本拠地 は顎 でドアを示した。
「今の私に戦闘力はない。君の仕事は護衛だ。ドアを開けろ」
横柄な態度には腹が立つが、術中 を捕まえるのはやぶさかではない。
ノックする。返事があった。
待っていたが出てこない。
鍵はかかっていなかった。
ぼくはドアを開けて、脇によけた。
「どうぞ」
「粗忽者 め。術中が深湯甕 の部屋と同じ小細工をしていたらどうするのだ?」
「だからです。奇遇ですね」
睨 み合うぼくたち。
「死体爆弾を持っているお前が先陣を切るべきだろう!」
「一番槍は譲ってあげますよ。まだ戦果をあげてないでしょう?」
まだまだ睨み合うぼくたち。
すると術中が姿を現した。明かりが消され、カーテンが閉められた部屋の奥に。
術中はそこから動かない。
「どうしたんですか」
本拠地は胸を張った。
「君には殺人未遂の容疑がかかっている。弁明する用意はあるかな」
「なにかあったんですね」
しらばっくれる術中にぼくは事件のあらましを説明する。犯人であるという根拠は本拠地が奪い取るようにして披露した。
術中はうなずいた。
「あなたの言うとおり、私には部屋に細工をする時間と能力がありました。ですが、天気スキルは全 さんも持っています。私が深湯甕さんたちを溺死させようとした証拠はありますか」
確かに指紋で証明できるのは部屋の細工までだ。所持と使用の痕跡がのこりにくいスキルは実に厄介な存在感なのだ。
ぼくは本拠地見た。
「裁判をすればわかるさ」
ないのかよ。証拠が。
本拠地は説明しなかったが、おそらくぼくたちが襲われた同時刻、全も天気スキルを使っているのだ。
どちらかはぼくらの部屋に。もう一方は島のどこかに雷を落とし雨を降らせた。
本拠地にも確証はないのだろう。
勘と尋問で実行犯を炙り出すつもりなのだ。
探偵には種類がある。
推理で戦う名探偵タイプ。
捜査で証拠を固める警察タイプ。
そして、牢屋制度を活用する弁護士タイプ。
エンディングでは誰が誰を殺したか明かされ、犯人を投獄したものは勝利判定もされる。
このゲームはそれを良しとするのだ。
深湯甕流なんて悪口を言われるが、現実だったらとてもじゃないけど公判を維持できないだろう。
本拠地は自信満々に詭弁を弄してゴリ押しする弁護士タイプなのだ。
本拠地は笑う。
「なぜ部屋を改造したのか。言い訳は裁判で聞かせてもらおうか。容疑者は君と全だ。2人は共謀しているのだ。どちらが犯人が立証できなければ逃げ切れると考えているようだが、そうはいかない」
おいおい、2人まとめて始末する気だぞ。
術中は余裕をみせている。
「そうですか。どうぞ入ってください」
すると部屋の中から音楽が聞こえてきた。
その音は次第に大きくなっていく。
即興劇伴。
注意を惹きつけてやまない不穏なメロディ。
戦闘が多いこのゲームでは物音が重要だ。
妨害するつもりではないだろうが、地味に邪魔だった。
牢屋制度を利用するには生存者全員がどこかの部屋に集合しなければならない。
彼らを軟禁するか投票する場合、術中、全は当然反対。
華満はどちらに味方をするか断定できない。
潮尾は賛成票を投じるだろう。
本拠地が術中たちに勝つには僕と閻羅の票が欠かせない。
つまり本拠地がぼくたちを背後から襲うことはない。
しかし危険すぎるな。
それに裁判の場を整えても、逆に仕掛けられる可能性がある。
全と共闘していた場合、内田たちを殺した犯人は想像がつく。
潮尾はもちろん、くそ真面目な閻羅は本拠地に有罪を投じるはず。
ぼくは呼びかけた。
「裁判すればあなたたちは負ける。たとえ本拠地さんが失敗しても解決数で閻羅には敵わない。閻羅と術中さんの望みは同じなんですし、投降してください」
本拠地が顎を上げて見下してくる。
「ボケが。同じではない」
「変えたくない、だったはずですけど」
「頭をつかえ」
「そういえば本拠地さんの望みってなんなんですか?」
本拠地はにたっと笑った。
「コマーシャル!」
嘘つきばっかだな。
すっと本拠地の顔に影がさした。
「見ろ。お前がぐずぐずしているせいで、優位を失ったぞ」
人数カウンターが6人になっていた。
プレイヤーではあるが、潮尾は運営側の人間だ。
犯人にはなり得ない。
ぼくは肩をすくめた。
「すぐに7人になりますよ」
どうやら三つ子が必要になったらしい。
大きく減少する
食事で回復する
+++++++
術中の部屋の前。
「今の私に戦闘力はない。君の仕事は護衛だ。ドアを開けろ」
横柄な態度には腹が立つが、
ノックする。返事があった。
待っていたが出てこない。
鍵はかかっていなかった。
ぼくはドアを開けて、脇によけた。
「どうぞ」
「
「だからです。奇遇ですね」
「死体爆弾を持っているお前が先陣を切るべきだろう!」
「一番槍は譲ってあげますよ。まだ戦果をあげてないでしょう?」
まだまだ睨み合うぼくたち。
すると術中が姿を現した。明かりが消され、カーテンが閉められた部屋の奥に。
術中はそこから動かない。
「どうしたんですか」
本拠地は胸を張った。
「君には殺人未遂の容疑がかかっている。弁明する用意はあるかな」
「なにかあったんですね」
しらばっくれる術中にぼくは事件のあらましを説明する。犯人であるという根拠は本拠地が奪い取るようにして披露した。
術中はうなずいた。
「あなたの言うとおり、私には部屋に細工をする時間と能力がありました。ですが、天気スキルは
確かに指紋で証明できるのは部屋の細工までだ。所持と使用の痕跡がのこりにくいスキルは実に厄介な存在感なのだ。
ぼくは本拠地見た。
「裁判をすればわかるさ」
ないのかよ。証拠が。
本拠地は説明しなかったが、おそらくぼくたちが襲われた同時刻、全も天気スキルを使っているのだ。
どちらかはぼくらの部屋に。もう一方は島のどこかに雷を落とし雨を降らせた。
本拠地にも確証はないのだろう。
勘と尋問で実行犯を炙り出すつもりなのだ。
探偵には種類がある。
推理で戦う名探偵タイプ。
捜査で証拠を固める警察タイプ。
そして、牢屋制度を活用する弁護士タイプ。
エンディングでは誰が誰を殺したか明かされ、犯人を投獄したものは勝利判定もされる。
このゲームはそれを良しとするのだ。
深湯甕流なんて悪口を言われるが、現実だったらとてもじゃないけど公判を維持できないだろう。
本拠地は自信満々に詭弁を弄してゴリ押しする弁護士タイプなのだ。
本拠地は笑う。
「なぜ部屋を改造したのか。言い訳は裁判で聞かせてもらおうか。容疑者は君と全だ。2人は共謀しているのだ。どちらが犯人が立証できなければ逃げ切れると考えているようだが、そうはいかない」
おいおい、2人まとめて始末する気だぞ。
術中は余裕をみせている。
「そうですか。どうぞ入ってください」
すると部屋の中から音楽が聞こえてきた。
その音は次第に大きくなっていく。
即興劇伴。
注意を惹きつけてやまない不穏なメロディ。
戦闘が多いこのゲームでは物音が重要だ。
妨害するつもりではないだろうが、地味に邪魔だった。
牢屋制度を利用するには生存者全員がどこかの部屋に集合しなければならない。
彼らを軟禁するか投票する場合、術中、全は当然反対。
華満はどちらに味方をするか断定できない。
潮尾は賛成票を投じるだろう。
本拠地が術中たちに勝つには僕と閻羅の票が欠かせない。
つまり本拠地がぼくたちを背後から襲うことはない。
しかし危険すぎるな。
それに裁判の場を整えても、逆に仕掛けられる可能性がある。
全と共闘していた場合、内田たちを殺した犯人は想像がつく。
潮尾はもちろん、くそ真面目な閻羅は本拠地に有罪を投じるはず。
ぼくは呼びかけた。
「裁判すればあなたたちは負ける。たとえ本拠地さんが失敗しても解決数で閻羅には敵わない。閻羅と術中さんの望みは同じなんですし、投降してください」
本拠地が顎を上げて見下してくる。
「ボケが。同じではない」
「変えたくない、だったはずですけど」
「頭をつかえ」
「そういえば本拠地さんの望みってなんなんですか?」
本拠地はにたっと笑った。
「コマーシャル!」
嘘つきばっかだな。
すっと本拠地の顔に影がさした。
「見ろ。お前がぐずぐずしているせいで、優位を失ったぞ」
人数カウンターが6人になっていた。
プレイヤーではあるが、潮尾は運営側の人間だ。
犯人にはなり得ない。
ぼくは肩をすくめた。
「すぐに7人になりますよ」
どうやら三つ子が必要になったらしい。