第15話 血族の交差点に立つ

文字数 1,505文字

 P(ポイント):1人殺すごとに1P(ポイント)
   正当防衛による返り討ちや
   事故の解明1件ごとに1P
   犯人逮捕1人につき1P獲得
   逮捕されたり死ぬとPを失う

++++++

そろって神経衰弱が強いし、動体視力が良くて。
ぼくには訓練が必要なあれこれも、従兄弟(いとこ)再従兄弟(はとこ)たちには生まれつき備わっている。
ひいお爺様の葬儀ではみな同じように静々と泣いていた。

明らかにぼくはみんなとは違ったけれど、確かにぼくは深湯甕(くがえ)家の一員だった。

犯罪が明らかになる瞬間、景色が開かれるように事件のすべてが見通せるのは、いい気分ではないと思う。

それでもやっぱり深湯甕であるなら、過去を見抜けなければならない。

家族を守れないから。




「何を考えている!」

壁に押し潰すようにしてとらえた潮尾(うしおび)にぼくは怒鳴った。

潮尾はガックリと首を垂れたまま動かない。
今度こそぼくは目を確かめる。
潮尾は死んでいた。

ぼくは無意識のうちにスキルを使っていたのだ。

ぼくは頭を振った。

「ああ、くそっ」

手を離す。潮尾の身体が崩れ落ちいていった。

本拠地(ほんきょぢ)が嫌味たらしく言う。

「優勝すれば刈耳(かるみ)に会うのだぞ? 深湯甕の父親が許すわけがないだろう? 始末しても始末しても死にきらないクローンメイド。暗殺者にはちょうどいい。君を狙えば、確実に深湯甕を殺れる。私は待っていればよかったのだ」

探偵殺しめ。

「はあ……」

ぼくは商品がいらないし、閻羅が死んだ今、ゲームを続ける意欲もないんだ。
帰ろう。こんな茶番は終わりだ。

すると、術中がこちらへ歩き出した。

「あなたも深湯甕の人間ならば、事件を見て見ぬ振りしてはならないはずです! ゲームを降りられては困ります。私は試さなければなりません。あなたに私が逮捕できるのか。残念ならが推理力は期待できないので、殺せるか試しましょうか」

嫌なやつだ。

落ち着けぼく。
あいつには天気スキルがある。ここは狭いし、どんな罠があるかわからない。

ぼくは閻羅(えんら)の死体を抱え上げて逃げる準備をする。

天徒(あまと)も連れていって!」

閻羅の声がした。
ゲーム内で。
見れば天徒の変装がとけている。

「どの口が言ってんだよ! 片手じゃ無理だ。自分で走れ!」

「ひどーい! 折った本人が言うー!」

今度は現実で閻羅がお願いしてきた。

「僕は死んでるから置いていけばいいいよ。天徒を助けてあげて」

向かってくる足音と、走り去る足音。

本拠地がダッシュで逃げている。
あの野郎!

閻羅は言った。
「僕はフミくんに勝ってほしいな。このゲーム、僕じゃ勝てない(・・・・)んだよ」

もう、仕方ない。ここで迎えうつ。
僕は閻羅をおろして構えた。

術中は包丁を取り出す。

「主催者として有名になってしまったけれど、参加者として何度も勝利しているんだよ。探偵としても、犯人としても」

ぼくは考える。天徒が生きていた以上、死んだのは(まった)華満(はなみつ)だ。
演奏しているのが全とは限らない。

ばさり。

何かが羽ばたく音がした。

「嘘だろ……!」
ぼくは目を疑う。
廊下を鳥が飛んでいる。

そいつはついさっきまで人だった。リアルな閻羅の姿をしていたんだ。

何が変装スキルだ!
人以外にも変身できるのかよ!
狼人間もありだな!

想定外のことに仰天していると、術中が部屋の境界を超えて出てきた。
一直線にぼくのふところへ。(てら)いのない動き。
だが、ぼくの敵じゃない。

術中の包丁を持った右手を抱き込み、足をかけて裏返す。
額を掴んで潰そうとしたぼくに、術中は告げた。

「私も君らの遠い親戚なんですよ」

吹き飛ぶ頭。

どれだけ血が薄くなれば、深湯甕の人間だと判断されなくなるのか。

現実に引き戻されたぼくは閻羅を見た。

閻羅はなにを感じていたか?

『僕じゃ勝てない』

どれくらい血が薄くなると、深湯甕の血族を察知できなくなのだろうか。

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登場人物紹介

姓牙淵 無黒/かばねがふち むくろ

ゲーム主催者。

術中 百中 / すべなか ひゃくちゅう

シナリオライター

野獣 / やじゅう(フォーヴ)

殺人鬼

医療スキルの達人

半裂 ささら / はんざき ささら

殺し屋

料理スキルを好んで使う

全 音符 / まった のーと

作曲家

ダイニングメッセージの名人

化狐 / ばっこ

翻弄する人

狐ポーズで有名な容疑者

花満 花蘂 / はなみつ はなしべ

死体アーティスト

内田 菊苗 / うちだ きくなえ

サイエンティスト

相棒役が得意

宣伝 第一 / せんでん だいいち

広告の一形態


本拠地 唯 / ほんきょぢ ゆい

探偵

自分以外の探偵を認めず排除する

潮尾 / うしおび

メイド

本業は探偵

深湯甕 閻羅 / ふかえ えんら

悪名高い警察一家の跡取り

権力と資産を背景に警察力を発揮する

山田 / やまだ (深湯 踏絵 / くがえ ふみえ )

閻羅のはとこ

刈耳 尊扉 / かるみ とうと

ミスサイティドミステリーの発案者

閻羅の母

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