第9話 いま何人目だ?

文字数 1,161文字

 牢屋制度:多数決の結果によりプレイヤー
      を軟禁することができる
      全員が同じ部屋に
      集合しなけければ行えない
      冤罪の場合は
      提案者が24時間後に死ぬ

+++++++++

深湯甕(くがえ)家は権力濫用し、血縁者を優遇する。

世間に恨まれる原因だ。

刈耳(かるみ)もそのことを知っていたのは間違いない。

ミスサイティドミステリーの考案者にして、閻羅が他人を犯罪者にするという噂の元凶となった刈耳(かるみ)尊扉(とうと)は閻羅の母親である。

刈耳尊扉は産まれて間もない娘の首を切りつけたが、事故と判断されたために起訴されてはいない。

深湯甕家の非血縁者への冷たさは周知の事実。なのでネットでは深湯甕家の呪いを間近に受けた政略結婚の犠牲者が精神を病んだ末に起きた犯行であり、起訴されるも無罪になったとかなり盛った話が流布していた。

傷つけられ、一緒に暮らしたことがないにもかかわらず、閻羅は母親を愛している。

そしてその甘さは異父姉妹にも向けられている。

深湯甕は血の繋がった者を決して犯罪者にはしない。



正体を現した閻羅の妹、天徒(あまと)。本物によく似たアバターで無邪気に笑顔を見せた。

「びっくりしたぁ?」

「しないよ。でも嬉しい」

無防備に抱き合う姉妹。

ぼくはほほえむ。
なんのためにぼくがいるのか。

しっかりハグしてから閻羅は告げた。

「嫌疑は十分。軟禁させてもらえないかな?」

「えー!?」

天徒はぼくを殺す可能性がある。

閻羅が天徒を犯罪者にしないために、再従兄弟(はとこ)であるぼくを殺される危機から守るのは当然だ。

正直言って、ぼくがいなければ閻羅は天徒を軟禁させはしなかっただろう。

内田は言った。

「決を取りますか?」

このゲームには逮捕拘束がわりの牢屋制度がある。多数決の結果次第でプレイヤーを閉じ込めることができるのだ。

ただし、冤罪の場合は発案者が決議の24時間後に死ぬ。
通称天罰。

死神でもいるのだろうな。
どうして超常現象に証拠を任せたがるのか気がしれない。

天徒の犯行に証拠はないが、十分すぎるほどに怪しかった。
成り代わられたい者なんていないのだ。
結果はわかりきっている。

天徒は肩を落として唇を尖らせると、笑顔を見せた。

「わかったよ! 自主軟禁? それでいいよね!」

「いいよ」

よくない! なんだよ自主監禁って。

だが、放っておけばこれからも犯行を続けるであろう犯人を提案者が牢屋制度を利用したポイント獲得を放棄したので、他の参加者には損がない。

妹に甘々な閻羅にこれ以上は望めそうにないな。

こうして天徒はおあつらえ向きの地下室で軟禁。
潮尾と内田が交代で監視することになる。

安心したところで潮尾を通して運営から発表があった。

「今この時を持って探偵観察視点に観戦モニターが絞られます。山田様の視点となります。あしからず」

サスペンスからミステリーへ。

いよいよ本番が始まる。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

姓牙淵 無黒/かばねがふち むくろ

ゲーム主催者。

術中 百中 / すべなか ひゃくちゅう

シナリオライター

野獣 / やじゅう(フォーヴ)

殺人鬼

医療スキルの達人

半裂 ささら / はんざき ささら

殺し屋

料理スキルを好んで使う

全 音符 / まった のーと

作曲家

ダイニングメッセージの名人

化狐 / ばっこ

翻弄する人

狐ポーズで有名な容疑者

花満 花蘂 / はなみつ はなしべ

死体アーティスト

内田 菊苗 / うちだ きくなえ

サイエンティスト

相棒役が得意

宣伝 第一 / せんでん だいいち

広告の一形態


本拠地 唯 / ほんきょぢ ゆい

探偵

自分以外の探偵を認めず排除する

潮尾 / うしおび

メイド

本業は探偵

深湯甕 閻羅 / ふかえ えんら

悪名高い警察一家の跡取り

権力と資産を背景に警察力を発揮する

山田 / やまだ (深湯 踏絵 / くがえ ふみえ )

閻羅のはとこ

刈耳 尊扉 / かるみ とうと

ミスサイティドミステリーの発案者

閻羅の母

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み