第23話 台風7号

文字数 693文字

雨が窓を打つ音が聞こえる。
雷が轟く音が聞こえる。
水をはねながら車が通る音が聞こえる。
外は荒れ狂ってたくさんの音が聞こえるのに、なぜか心は静かになる。

昔から夏の雨の日は好きなのです。
雨の日に見た景色や匂いが浮かんでくるのです。

だんだん暗くなってゆく空を教室から見ていたこと。
稲光から音がするまでの秒数を数えて、雷までの距離を計算していたこと。
部活の途中で大雨が降ってきて、ずぶ濡れになりながらはしゃいでいたこと。
どうぜずぶ濡れだからと、わざと水たまりを通った帰り道のこと。
水泳大会の途中で雨が降ってきて、みんなでテントで待機していたときのこと。
雨が止むのを待ちながら、自転車置き場でいつまでもおしゃべりしていたときのこと。
キャンプで夜に雨が降ってきて、小屋に避難したときのこと。
停電になって部屋が真っ暗になり、冷蔵庫の電気も切れてしまったので、ロウソクの火を灯しながら冷蔵庫のビールを飲んだこと。
雨で出かけられないから、部屋で一日中テレビを見ていたこと。
ずぶ濡れの髪の毛を拭いた好きなバンドのタオルがソファーに無造作に掛けられていた一人暮らしの部屋のこと。
雨粒が流れるオフィスの窓から見える電車のこと。
風雨で帰宅途中に電車が止まり、宿泊したホテルのプールで泳いだこと。
湿った土と濡れたタオルの匂いのこと。

そして、そんなことを思い出しながらエッセイを書いている今日のこと。

久しぶりにピーター・スピアーの絵本『雨、あめ』をめくってみた。




強い雨風の日はドキドキを感じるのです。
大変な思いをしている方もいるだろうし、不謹慎なのかもしれませんが、静かにドキドキしています。

神山ユキ
2024.8.16
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