第6話 仲間を信じる

文字数 793文字

仲間を信じる

アイスクリーム屋さんに向かって自転車をこいでいると、野球少年が私の横を追い越していった。

野球用のヘルメットにステッカーが貼ってあった。
------ 仲間を信じる -----
きっと素敵な言葉なんだろうな。
仲間を信じてチーム一丸でプレーするんだろうな。

でもね、、、
私の心の中にざらざらしたものがあった。
私の嫌いな言葉ランキングがあったら、「仲間を信じる」は上位にランクするはずだ。

私に野球の経験はない。
だから野球において仲間を信じるということが、どういうことなのかは何も分からない。
ただ、『仲間を信じる』という言葉を見て嫌悪感が沸き上がった。

我ながら酷い性格だと思う。

「仲間」ってなんだ。
おそらく、監督・コーチなども含めた野球チームのメンバーのことだろう。

おそらくその野球少年は野球がやりたくて野球チームに入ったのだろう。
そこにいるメンバーはただの偶然だ。
その少年が信頼できる友人を集めて作った野球チームではないはずだ。
そうすると、信じる根拠はなんなのだ。
それが気になる。

一緒のチームだから、一緒に練習しているから、ということだろうか。
だが、一緒のチームなのはただの偶然だ。
自分で選んだわけではない。

偶然でもチームメイトだから信じろというのか。
ならば偶然でも、一緒の職場で働く人たちを仲間だから信じろというのか。
ならば偶然でも、同じ国に生まれた人たちを仲間だから信じろというのか。
ならば偶然でも、同じ惑星に生まれた人たちを仲間だから信じろというのか。

偶然一緒の所属になっただけの人を信じることができるのであれば、全世界の人を無根拠に一人残らず信じることができないと論理的に整合しない。
そんなことできるはずがない。

私には「仲間を信じる」なんて、綺麗ごととしか思えない。

少年野球のチームのステッカーを見てそんなことを思う私はやはりすさんでいるのだろうか。

神山ユキ
2022.8.28
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