第15話 TVドラマ『あなたがしてくれなくても』の感想、性的同意について

文字数 1,878文字

性的同意は完全に自由であるべきで、何人にも強制・制限されるべきでない。

唐突ですが、知人に勧められてTVドラマ『あなたがしてくれなくても』を見ています。
テレビドラマを見るなんて十数年ぶりです。

みち・陽一 の夫婦(子なし)
楓・誠 の夫婦(子なし)
の2組の夫婦のセックスレスを描いたドラマです。

みち役は奈緒さん、陽一役は瑛太さん、楓役は田中みな実さん、新名役は岩田剛典さん、です。

久しぶりに見るTVドラマはとても新鮮で、美男・美女が出ていて、それだけで気持ちがいいですね。そんなことすら新鮮に感じるとは、よほど自分はテレビドラマからかけ離れていたのでしょう。

先日、私にこのドラマを勧めてくれた友人たちと焼肉屋さんで感想を語り合いました。
陽一がクズだとか、みちはあざといだとか、楓はひどい女だとか、誠の可愛い犬のような顔はズルいだとか、自分だったら誰のキャラに近いだとか、、、あーだこーだと気の向くままに語り合いました。

TVドラマの感想を語り合うなんて、いったいいつぶりだ、というか今まで一度もそんなことはしたことが無かったかもしれない。こういう非生産的な時間の過ごし方って楽しいですね。

さて、それで私は少し気になることがあるのです。
冒頭に書いたように、性的同意は完全に自由であるべきで、何人にも強制・制限されるべきでない、と思うのです。
そして、そのことに異論のある人はあまりいないと思います。

ただ、そう考えると、ドラマの中で示されている(?)価値観や、ドラマを見た人の感想、あるいは既存の社会規範と両立しない部分があるような気がするのです。私は弁理士という仕事をしているせいか、論理的に考える癖のようなものがあり、どうもひっかかるのです。

性的同意は完全に自由であるべきで、何人にも強制・制限されるべきでない、との価値観を前提にすると、セックスする/しないに関して誰からも責められたり、非難されたりするべきではない、という規範が導かれます。

何人にも強制されるべきでない、との規範に基づくと、ドラマの中で夫である陽一が妻であるみちとセックスしない(できない)ことに対して、みちも含めて誰からも責められたり、非難されたりする筋合いはないはずです。セックスレスのことで妻であるみちが悩んでいたり、傷ついたりしていたとしても、陽一がみちとのセックスを拒否するのは陽一の自由なのではないかと考えられるのです。

また、新名夫妻に関しても、妻である楓が夫である誠とのセックスを拒否することも同じで、楓には何らの非もないはずです。たとえ夫である誠が拒否されることに傷ついていたとしても、性的同意に完全な自由意志が保証されると考えるなら、楓がセックスを拒否することは楓の自由であり、楓が非難されるのは筋違いだと考えらます。

焼肉屋さんで感想を語り合った知人たちは、セックスを拒否している陽一や楓に対して何らかの責任があるように考えているようでした。ネットでもそういった感想をちらほらと見かけました。

さて、性的同意は完全に自由であるべきで、何人にも強制・制限されるべきでない、という考え、特に「制限されるべきではない」に基づくと、もう一つ別の価値観が現れてきます。

ドラマの中で、誠とみちは同じ建設会社で働く上司、部下の関係であり、互いに夫婦間のセックスレスの悩みを打ち明けてから、お互いに惹かれあっていきます。この二人の関係がどうなっていくのか、というところがこのドラマの見どころであり、面白いところです。

性的同意は完全に自由であるべきで、何人にも強制・制限されるべきでない、という考えに基づくと、みちと誠がセックス(つまり不倫)するかどうかについては、お互いの性的同意の問題であり、第三者がとやかく言う問題ではない、という考えが導かれます。つまり、みちと誠がセックス(不倫)するかどうかは両者の間の合意の問題であり、第三者(みちの夫である陽一や、誠の妻である楓)は干渉すべきことではない、ということです。当然、非難する権利もないと考えられます。

性的同意は完全に自由であるべきで、何人にも強制・制限されるべきでない、ということを前提にすると、こういう結論になるのではないでしょうか。

不倫は不貞行為とされていて、一般的な社会規範からは許されない行為とされていますが、性的同意の自由を保障すると一般的な価値観からズレませんかね。結婚すると、性的同意の自由が制限される、あるいは権利の一部を放棄する、というようなことなのでしょうか。

私としてはそれもなんか変な気がします。

2023.6.4
神山ユキ
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