コント「師匠に全部言ってみた。」

文字数 2,544文字

(着物姿の師匠と弟子で座っている)




師匠: ........おい。



弟子:はい!



師匠:水。



弟子:はいどうぞ。



師匠:ありがとう。 ...新聞。



弟子:あっはい!



師匠:ありがとう。...腹減ったな。なんか買って来てくれるか。



弟子:はい!



師匠:ありがとう。



弟子: .....ふぅー...やっぱダメだ、言おう!あの師匠!



師匠:ん?なんだい?



弟子:ずっと思ってたことがあるんですが、今日は言わせていただきます!あの...あの...!



師匠:...



弟子:...自分で行け!!!



師匠: ...ん?



弟子:自分で行けよ!ここからコンビニまで2分だぞ!腹減ってたら自分で行ったほうが食べたいもの買えるじゃん!

オレやだよ彼女でもない人の食べたいものとか腹の減り具合とか考えて買い物すんの!家で食って来いよ!ブスの奥さんに作ってもらえよ!



師匠:なんてこと言うんだ!師匠の嫁ブスって!



弟子:大体水くらい自分で持ってろよ!なんで俺に持たせるの!なんなの両手骨折してんの!?



師匠:してないよ!両手共に元気だよ!



弟子:両手粉砕骨折してんの!?



師匠:粉砕を足す必要はない!骨折だけでその嫌味伝わる!



弟子:新聞だってさっき明らかに俺より師匠のほうが近かったしなんで取らせるの?なんだ新聞に結婚指輪でも入ってんのか!



師匠:入ってないわ!弟子にサプライズでプロポーズしないわ!



弟子:答えはノーだよ!



師匠:だからしてねぇんだよ!勝手にフるな!



弟子:もうオレ嫌だよ!こんなことするために落語家になったんじゃねぇんだよ!もうウンザリだよ!



師匠: ...分かった。そんなに嫌なら、これからは気を付けるようにしよう。



弟子: ......いやキレろよ!!!!



師匠: ...はあ!?



弟子:弟子がこんな最低なこと言ってんだぞ!ブチギレろよ!



師匠:いやただこういう時代だからな!



弟子:破門だ!って言えよ!破門チャンスじゃん!



師匠:破門チャンスってなんだよ!俺別にそのチャンス伺ってないし!



弟子:オレ奥さんブスって言ってんだぞ!さっきみたいなお笑い的なツッコミじゃ絶対ダメじゃん!完全な破門タイムじゃん!



師匠:だから破門タイムってなんだよ!



弟子:破門フィーバーじゃん!



師匠:次々破門で新しい言葉作るな!!なんのゲーム番組のコーナー名なんだよ!

なんなんだお前そんなに破門になりたいのか!



弟子:違う!オレはただ!ただ!もっと難しい師匠に付きたかっただけだ!!!



師匠: ..はあ!?



弟子:アンタイージー過ぎるんだよ!オレは難しい師匠の悪口を弟子仲間と言い合うために落語家になったんだ!!!



師匠:はあ!?なにその世界初の志望動機!



弟子:テレビで師匠の悪口を言いまくってるのを見たあの日から!オレはその瞬間だけを楽しみに生きてきた!



師匠:それそんな憧れるような瞬間か!?なんなんだその番組!



弟子:師匠の悪口言いまくりバラエティー!



師匠:なんだそのクソみたいなジャンルは!



弟子:遂に訪れたおとといの飲み会!他の弟子たちはそれぞれの師匠の悪口が止まらなかったよ!

うちの師匠は笑いを取ったことがない、うちの師匠は声が小さくてひとつも聞こえない、うちの師匠は不倫してる



師匠:おい落語界大丈夫か!?そんなダメな師匠ばっかりなの日本って!



弟子:それがオレだけが!この飲み会をするために落語を志したオレの師匠だけが!

舞台に上がれば大爆笑!時にはホロッと泣かせてみせる。

後輩にも優しく結婚してから30年間ノースキャンダル!ふざけんじゃねぇよ!!!



師匠:俺本当になにでキレられてんの!?人類史上最も理不尽なふざけんじゃねぇよくらったんだけど!



弟子:オレ飲み会で一言もしゃべんなかったんだぞ!!



師匠:いやそこはなにかしゃべれよ!なに悪口しか言わないと決めてんだ!



弟子:もっと難しい師匠になってくれよ!アンタ水は軟水しか飲まないんだよな!オレずっとわざと硬水渡してたんだぞ!



師匠:そうなの!?俺ずっと硬水飲んでたの!?



弟子:気が付けよ!それで叱って罰与えろよ!そしたら水間違えたくらいで罰のクソ師匠って言えるだろ!



師匠:だから状況が分かんないんだよクソ師匠になれってキレられてんの!

そんな言いたいならその水に全然気付かないって話すればいいだろ!



弟子:いやダメだよ!今の時代天然はむしろプラスとなりクソ感が弱まる!!



師匠:クソ感ってなんだよ!そんなに強めたがってんのお前だけだぞ!



弟子:アンタは完璧過ぎる!そんなんじゃ上にはいけねぇぞってもう1番上に居るのかちくしょう!!



師匠:お前ずっとなに言ってんの!!?本当に分かんないお前から出て来る言葉が全部分かんない!



弟子:難しく...なってくれよ......!ちくしょうー!!!!



師匠:おいこれなんの映画のクライマックスだ!!最愛の人になにかあったのか!ああ分かった!難しいこと言えばいいんだな!

じゃあ腹減ったから!食べただけで面白い落語が話せるようになるもの買って来い!



弟子:おっいいねそういうのそういうの!



師匠:お前凄まじいドMだな!!でもそのMは悪口を言うためだしどっちだ!!



弟子:じゃあ行って来ます!



師匠:うんありがとう!



弟子:そのありがとうもやめろ!!!弟子が師匠のために動くなど当たり前だ虫ケラがと思っていろ!!



師匠:お前ずっと人として間違ってるぞ!!



弟子:あと厳密に言うとオレに言われて難しくなってもむしろ優しいからダメ!!



師匠:ああもう分かんない!!そんなこと言われたら無理だ!



弟子:あとオレがずっとタメ口なのも叱れ!!!



師匠:いやそれは思ってたけど言葉使いにこだわる時代はローラの登場で終わったんだよ!



弟子:もう嫌だ。オレ辞めます。



師匠: ...そうか。残念だ。お前には才能があった。お前なら必ず、日本一の落語家になると思っていた。

それでつい優しくしてしまったが、それが逆効果だったんだな。本当に残念だよ。お前ほどの才能とは、2度と出会えないだろうな...



弟子: .....今までありがとうございました。



師匠:いやこれでも響かないか!!?そんなこと思ってたんですかすみません師匠心を入れ替えてがんばりますちょうだいよ!!



弟子:僕がんばってデヴィ夫人のマネージャーになります!



師匠:うんそれがいいだろうね!!





最後までありゴトウ!

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