ある少女の思い出⑵
文字数 784文字
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私の家は、先代の祖父が戦争で武勲をあげたことで肩書きを得た、いわゆる成り上がりというやつだった。
そのせいか、他の由緒正しい貴族サマ達からはハッキリと疎んじられることも多く
娘の私にも、そのことが飛び火してくることもしばしばあった。
「平民もどきのくせに!」
「この薄汚れた血め!」
他の貴族の子達からは、幼いころから様々な罵りの言葉を浴びせかけられもした。
まだ弱くて引っ込み思案だった私にはどうすることも出来ず、
両親にさえ、言い出すことは出来なかった。
いつしか、そういうことを全部引っくるめて「仕方ない」と頭の片隅で片付けるようになった頃。
両親に連れられていったどこぞのパーティ会場で、
私は彼女と初めて出会った
綺麗なドレスに身を包んだ彼女。
明るく快活で、この世のどんな悪意も感じさせないその笑顔に、私はひどく憧れた。
私なんかにも、優しく微笑みかけてくれる彼女。
そのそばへ、少しでも近づけたらと思ってしまった。
強くなりたいと願ってしまった。
だからこそ、そのあとに起こった事件によって、私は彼女を余計に憎むようになったのかもしれない
彼女の父親が、とある商談を持ちかけてきて、最終的には私の父に全ての責任と借金を押し付けたこと
そのせいで、母の病状がひどく悪化してしまったこと
憧れたからこそ、憎しみも余計に深く、強く
胸の中に、まるで赤い炎のように宿ったのだ。
殺してしまいたいと、そう願うほどに……