コーディネート

良いと思って
選んだ服色が
気に入らなかったらしく
一緒に歩きたくない
と言われた

だったら
帰ればいいのに
誕生日プレゼントは
買って欲しい
と言うのだから
質が悪い

連れと
分からないように
三メートル離れて歩く

店には入らず
会計時に
入れ替わる

要は
財布だ

なんて
惨めな男だとは
思わない

今日は
彼女の誕生日なので
張り切り過ぎた

黄色のワイシャツに
赤のネクタイ
青のパンツ
白のスニーカー

　信号機みたい

そう言いながら
笑ったから
一緒には歩きたくないが
断固拒否でもないのだろう

年に一回
娘に会う日は
ついつい
冒険してしまうのだ

父親としての存在感を
示したい

ただの
財布と
思われるのが嫌なのだ

　信号機と食事は嫌だから
　私が選んであげる

予想外の言葉に
浮足立つ

ひとりでは
絶対に入ることのない
ブランドショップで
僕は着せ替え人形になる

誕生日プレゼントに
ブランドの服
そして
フレンチのフルコース

娘好みのコーディネートに着替えたら
並んで歩いてくれるのだから
安いものだ

失業したなんて
口が裂けても言えないから
カードを差し出す手が震えている