三十年

文字数 301文字

見知らぬ男たちが
そして
見知らぬ女たちも

三十年が
なかったかのように
あの頃に
戻って
懐かしむ

酒なんて
口にしたことも
なかった
彼等は
当たり前のように
杯を重ねる

三十年前の
自分を
探すために
酔うのだ


何を
して
どこに
誰と
暮らしているか

そんなことには
興味がない

見知らぬ男たち
見知らぬ女たち
ではなく
脂肪や
皺に隠れた
見知った少年たち
見知った少女たち

彼等が
時を
超えられるのは
時が
止ったまま
だから

止ったまま
だから
一足跳びに
戻れるのだ

懐かしさが
何かを
生み出す
なんて
誰も思っていない

ただ
現在から離脱して
戻れるうちに戻る
だけ

今の
自分から
離れて
あの頃の
自分に
ほんのひととき
戻るのだ

そして
一晩寝たら
何事も
なかったかのように
今の
生活に追われる
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み