蟻と僕

文字数 233文字

少し先で
何かが
忙しなく
動いている

蟻が集う
昆虫の死骸は
もはや形を失くし
ナニモノであったのか
分からない

季節がら
蝉だと思うが
もはや面影は
どこにもない

僕が踏めば
蟻も死骸となるが
死骸となった蟻は
蟻が運ぶのだろうか

蟻が蟻を
運んでいるのを
見たことがない

僕は
わざと
踏むふりをして
蟻の塊を
跨いで先を急ぐ

性格が
ひん曲がっている

人間社会で
蟻みたい僕は
密かな優越感に浸る


 あっ
 何すんの
 あんたは

 だって
 あの人も
 踏んだもん


背中に
男児の指先を感じる

蟻が
死骸になったのは
間違いなく
僕のせいだ
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