犬だった頃

文字数 311文字

ツナ缶を
開ける度に
犬だった頃を
思い出す

飼い主が
ツナ缶ばかり
食べる人で
いつも
半分を
エサ皿に
入れてくれた

老婆だったが
僕の方が
先に死んだので
その後
老婆が
ツナ缶を
ひとりで
平らげたか
どうかは
知らない

人間になって
ツナ缶を
ひとりで
平らげたいと
願っていたら
人間に生まれた

ひとりで
平らげることに
飽きたので
犬を飼うことにした

やはり
半分っこが
ちょうどいい

犬は
飼い主だった
老婆にどことなく
似ているダックスフントで
ツナを
エサ皿に入れると
力の限り
尾を振る

老婆は
力の限り
尾を振る
僕を見て
犬に生まれ変わり
ツナ缶を
食べたいと
願ったのだとしたら
奇跡だが
そんなことはあるはずもないか

それにしても
目の辺りが
そっくりだ

 早苗
 待て

老婆の名前を
つけたら
余計に似てきた
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