依頼人のご期待に添える⁉︎

文字数 972文字

白のメルセデスは錦糸町のホテル街へと入り、とあるホテルへと入っていった。

二人が出てきたのは午後4時頃であった。

我々にとっては長い時間。

二人にとってはあっという間に時が過ぎたであろう。

夫はJR錦糸町駅まで女性を送り、錦糸町インターから首都高速に乗り、八王子の自宅へと戻った。

時刻は午後6時頃であった。

我々は新宿の事務所に戻り、調査内容をまとめた。

妻には明日の午後、事務所で我々の調査内容を報告することになっていた。

長いようであっという間の1日が終わり、私は佐藤に軽く飲みに行かないかと誘われた。

佐藤の話では、いつも今回のようにスムーズに案件が片付くわけではないという。

私は実は頭のどこかで何か引っかかっていた。

なぜ夫は使いもしないゴルフシューズを新しく新調したのだろう。

妻が隠れていろいろとチェックしていたのを知っていたかのようだ。

妻は夫の携帯の中身も見ようとしたが、パスワードが分からず見ていない、と探偵のぎりぎりな誘導的質問につい漏らしていた。

そのようなことも夫は気づいていたのかもしれないと私は思った。

朝、レインボーブリッジを降り、信号待ちで我々と離れた時、夫は側道に車を停めた。

あの時夫は運転席で携帯をいじっていたが、実は尾行する我々を待っていたのではないか。

あの女性とは遊びではなく、本気で結婚を考えているのかもしれない。

妻が探偵に調査を依頼したことを何らかの方法で知り、むしろ我々は夫にうまく利用されたのかもしれない。

全ては当事者のみぞ知るところである。

これ以上深く詮索する理由は我々にはない。

次の日の午後、妻に昨日の証拠写真や調査報告を佐藤が伝えた。

「これで離婚する決意と、証拠を手にすることができました。」

と妻は言った。

妻自ら探偵を雇ってもらい、決して安くはない調査料の支払いをさせることが、妻が離婚をしようとする決意を強くさせることに繋がるのではないか。

夫の"戦略"を探ろうとすればするほど、私の中にもそのようなことをする自分がいるのではないかと思い、ゾッとした。

新婚の私のような人間にはわからない、何か複雑なものが夫婦の世界にはあるのかもしれない。

私は帰宅し、冬美に言った。

「ただいま、マイスイートハニー」

冬美は言った。

「早く手洗いうがいを済ませてきてね。
ご飯冷めるから。」


私はすごすごと洗面所に行き、その的確な指示に従った。
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