まずは台湾飯を調査!

文字数 957文字

我々が宿泊するホテルは、オフィスから徒歩5分ほどのところにあった。

フロントに行き、田中が、

「チェックインプリーズ」

と言うと、

「田中様ですね。」

と受付の台湾人の女性は日本語で言ってくれた。

もちろん部屋は別々であったが、隣ではあった。

スーツケースを部屋に置き、我々は中山駅近くのカフェレストランでディナー兼打ち合わせをした。

私はルーロー飯と鶏のスープのセット、デザートに豆花(トウファ)を頼んだ。

独特の八角の香りに台湾に来たことを実感させられた。

今回の案件の依頼人の夫は、台湾にも進出している日本企業の外食チェーンのビジネスマンだった。

出張で台湾に来て2年半程。

最初のうちは2ヶ月に一度は日本に帰ってきていたが、徐々に回数は減っていった。

ここ最近は妻が台湾に会いに行こうとすると、忙しいからといって拒むようになったという。

夫には浮気の前科は無かったが、そのことを妻は友人に相談すると、その友人は浮気の可能性を示唆したそうだ。

男にとってとんだアドバイスをする友人だが、そのかわり我々に仕事が入ることとなった。

明日は土曜日、夫は休日だ。

我々はそこを狙う。

夫は中山よりも北西にある大同区のマンションを借りていた。

朝5時頃、マンションの近くに我々のR34スカイラインを停め、夫を待った。

6時が過ぎ、田中を車に残し、二人分の朝食を近くの店に買いに行った。

ヨウティアオという揚げパンと、ダンピンという卵が入った甘くないクレープと豆乳を買った。

車に戻る途中、改めて夫の住むマンションを眺めると、オートロックが付いていて、管理人室もあり、立派な建物であった。

朝食は美味かった。

田中も台湾の食べ物が好きなので二人で揚げパンを取りあった。

午前8時過ぎ、夫がマンションからラフな服装で出てきた。

写真で確認した人物に間違いはない。

車に田中は待機し、私は夫の後を追った。

店の前に椅子やテーブルが並べてある食堂で、夫は朝食を取り始めた。

パイコーが載っている丼物を食べているようだった。

美味そうだ。

私はどんぶりの中身を望遠レンズで確認した。

分厚い肉に、トロトロの脂身が見える。

もちろん田中にはそこまでは報告はしない。

朝食を食べ終わると、夫は全家(ファミリーマート)に寄り、マンションへと戻っていった。

夫がつぎに姿を現したのは、午後5時過ぎであった。
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