さらに張り込みを続ける!

文字数 809文字

亡くなった女性は斎藤温子(さいとうあつこ)という日本人で、台湾の語学学校で日本語の教師をしていた。

年齢は32歳、未婚だった。

周から入った電話を切ると、私は田中と顔を見合わせた。

昨日田中は居酒屋を先に出た女性を尾行した。

田中によると、女性は淡水信義線の東門駅から2駅の大安駅で降りると、駅のそばのスターバックスに入り、そこで夜10時頃まで過ごし、途中コンビニに寄り帰宅した。

女性が自宅のマンションに入って行ったのは夜10時半頃であった。

田中はその後中山の事務所に行き、報告書を作成したので、田中がその場を離れてから殺人は起きたことになる。

女性のマンションに出入りする人間を確認できなかったことに田中は悔やんでいたが、まさか殺されてしまうと思わなかったのだからそれは仕方がない。

警察はどのような捜査を展開するだろうか。

時系列からすると夫には疑いはない。

居酒屋を出て、中山で降りた夫を私は見失ってしまったが、その後すぐに圓山の夫のマンションに行き、入り口を見張っていたし、実際に今朝7時頃夫がマンションから出てきたところを私と田中が確認した。

つまり私が見失った後、夫はすぐ自宅のマンションに帰宅していたことになる。

夫は安田隆(やすだたかし)といい、年齢は37歳、日本から2年半前に妻と子を残して台湾に出張できた男で、妻から浮気調査を依頼され、我々は調査していた。

既に安田がニュースを見たのかはわからないが、女性が殺されたことを知ったら、さぞ驚くであろう。

我々の目的は、夫の不貞を抑えることであり、まだその調査依頼を達成していなかった。

安田隆と斎藤温子が不倫関係にあったのかはわからないが、我々はもうしばらく安田隆を見張ることにした。

私はスカイラインを降り、朝食とお手洗いを借りに、昨夜行ったカルフールでパンやお菓子、田中が好きだというマーラーカオ(香港風蒸しパン)を買い込んだ。

張り込みをしているという実感を噛み締めながら。
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