朝まで張り込む!

文字数 1,199文字

圓山駅からスカイラインに戻る途中に雨が降り始め、次第に本降りとなった。

急いで車に乗り込むと、妻の冬美が用意してくれたハンカチで、服に着いた雨を拭った。

しばらくすると田中から連絡が入った。

女性は彼女の住居の最寄り駅の大安駅近くのカフェでしばらく過ごしたあと、自宅のマンションへと帰った。

田中はこれから中山の事務所に戻り、今日の報告書を作成するとのことだった。

私は夫がまだ自宅のマンションに戻っていないかもしれないと伝え、もう少しスカイラインの中で待機することにした。

しかしその後も夫の姿を見ることはなく、時刻は深夜12時近くになった。

コンコンと車の窓を叩く音がしてその方向を見ると、田中がマクドナルドの袋を持って雨の中立っていた。

「お疲れ様。お腹すきましたでしょ。
まだ戻ってこないですか?」

田中が言った。

私は夫が別の女性を連れ込む可能性も考え、まだここで張っていると伝えた。

「そうですね。私もここで一緒に待機します。
近くにカルフール(24時間営業のスーパー)があるので、お手洗いをお借りしたら?」

田中はそう言ってくれた。

私は田中が買ってきてくれたマクドナルドを食べ、カルフールにトイレを借りに行った。

もちろんちゃんとチョコレート菓子も買った。

田中はここに来る前に、事務所で作業をした後、ホテルに戻ってシャワーを浴び、着替えていた。

私は車に戻ってから、田中になぜ探偵になったのか聞いた。

「よくある話ですけど、探偵ものの小説、よく読んでいたんです。

P・D・ジェイムズのコーデリアグレイ。

それに憧れて。」

私も同じく小説に憧れ、探偵になった。

私達はその後交代で仮眠した。

粘りに粘って朝7時を迎えた頃、夫はマンションから出てコンビニへ出かけ、再びマンションへと戻った。

おそらく私が中山で夫を見失い、スカイラインに戻る前にマンションに戻っていたのだろう。

しかし今日は日曜日。

また夫は昨日の女性や他の女性と会うかもしれない。

私達はこのまま今日もここで夫を張ることにした。

「柴田さん、シャワー浴びてないでしょ。
ついでに着替えてきたら?」

田中がそう言ってくれたので、私は一旦中山にあるホテルに戻ることにした。

ホテルに戻り、シャワーを浴び着替えると、生き返った。

ケトルで湯を沸かし、コーヒーを入れ、テレビをつけた。

朝のニュースをやっていた。

「今朝、午前6時頃、大安区のマンションで女性が血まみれの状態で発見され、その後死亡が確認された。」

中国語だが、おそらくそうキャスターは言っていた。

下に女性の顔写真も映ったが、昨夜夫と会っていたあの女性であった。

私は慌てて田中に電話をした。

事務所に連絡すると、既に周は出勤していた。

「わかりました。女性の身元を確認し、また折り返します。」

周はそう言ってくれた。

私は田中がいるスカイラインに急いで戻った。

田中も動揺していた。

私達はスカイラインの中から夫のマンションを見上げたのだった。
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