犯人を逮捕!

文字数 1,029文字

オーナーの話によると、盗難をした客に接客をした店員への予約がまた1週間後に入っていた。

しかしこの間とは違う客のようだ。

私達は今度はサロンの中にある別室に密かに待機していた。

今回は警察に協力する形になっており、我々の隣には男性の警察官が一人、店の外には二人の警察官が待機していた。

その予約していた客夫婦は同じように2階のブライダルサロンに案内された。

着席をし、冷たい飲み物が出された。

店員が丁寧に挨拶をし、いくつか指輪を持ってきた。

一つ渡しては客夫婦が眺め、はめて、そして店員に返す。

それがしばらく続き、4つ目の指輪も同じように店員は客に渡した。

客に指輪を渡そうと店員が腕を伸ばした時、客の夫の方に出されていたリンゴジュースの水面がかすかに揺れたように見えた。

しかし客は伸ばした店員の手から指輪を受け取り、同じように眺め、はめて、店員に返した。

そして出されたリンゴジュースを飲み、夫婦は店員と親しそうに話し店を出た。

吉田が隣にいた警察官に頷き、合図をすると、その警察官は外で待機していた二人の警察官に無線で呼びかけた。

「今出た客を確保しろ!
男の口の中をすぐに調べろ!」

二人の警察官は夫婦を取り押さえ、男の口の中にタオルを突っ込むと、タオルと一緒に指輪を取り出した。

我々が店の外に出た時は、既にその夫婦には手錠がかけられていた。

とある一人の女性店員と、客を装った複数の仲間の犯行であった。

客は予め示し合わせた女性店員に指名して予約をし、女性店員は模造品と隠し持った本物の指輪を防犯カメラに写らないように、同時に手に持った。

一つだけの指輪であると不審に思われるので、他の客に接するように、いくつかの候補を客に見せた。

そして目的の指輪を渡す際、本物の指輪を客のジュースに静かに落としつつ、手に持った模造品を客に渡した。

客は模造品を眺め、手にハメ、いかにも他の指輪と同じように見て、店員に返した。

そして客は本物の指輪が落とされたジュースを口に含む。

リンゴジュースが都合がいいのは、白く濁っていて、ジュエリーの地金のプラチナの白い輝きが多少カモフラージュされるからであろう。

店の中からは女性店員が、中で我々と一緒に待機していた警察官に逮捕され、警察署に連れていかれるところであった。

ベテランの吉田の手柄であったが、吉田は何一つ得意にはならなかった。

むしろこれくらいも見抜けないのかと警察に対して思っていたのかもしれない。

元警察官であったようなのでなおさらなのであろうか。
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