第14話

文字数 2,409文字

ロボサムライ駆ける■第15回■徳川公国ロボット侍、早乙女主水は 西日本都市連合のロボ忍びと戦い追払う。助けた子供ロボは、ロボ登録番号を削られて,はぐれロボ、細工師の知恵(ちえ)といった。

ロボサムライ駆ける■第15回■第三章 霊能師(4)

■東海道 沿岸部 霊能士落合レーモンの関西行行列そば

「くそっ、皆出て来い」
 まわりに急に黒い影が現れる。
 西日本都市連合の使い忍び十名。
「ただでは帰してくれぬようだな」
 フリスビー野郎が言う。
「さよう、お代を払ってほしい。じゃない。貴様とそのこわっぱ、証拠が残らぬよう分解し、粉々にしてくれるわ」
「それはどうかな。粉々になるのはどちらかなあ」
 その男はにっこりとほほ笑んでいる。
 一瞬後、侍と子供ロボットのまわりをとりかこむロボ忍。
 続いてロボ忍の手から何かが次々と投げられた。手裏剣である。
 が、侍ロボットは瞬時刀を抜き、自在に振り回す。手裏剣はすべて足元に落ちていた。刀を動かす速度は目にも止まらなかった。
「くっ、我らが頭脳手裏剣を落とすとはただ者ではないのお、お主」
 「頭脳手裏剣」は、小型の電子頭脳を持ち、軌道を計算するいわば小型ロボットである。
「今度はこの刀じゃ…」
 黒い影が一つ、その男に切りかかる。
「まて…」
 ロボ忍者のリーダーが止めようとしたが。一瞬遅く、
「ぐわっ」
 そのロボ忍の体が三つにおろされている。機械油や生命液が噴き出ている。その動きはロボ忍群たちにも見えないのだ。
「見たか、聞いたか、さんまい降ろしの剣」
「やったね。ピース」
「いかん、皆引け。覚えていろよ。お主、名前を聞いておこう」
「名乗るほどではない。が、覚えておくため答えてやろう。拙者、早乙女主水(さおとめもんど)。徳川公国直参旗本(じきさんはたもと)ロボット」
「貴様が主水か。いずれ会おうぞ」
 ロボ忍は、名前を聞いて少し驚いていた。 
彼らは一塊になり、姿を消す。
「主水(もんど)のおじさん、助けてくれてありがとう」 子供ロボが擦り寄る。
「まあ、よい。危ないことには近づかぬ方がよい。特にこの御時世ではな」
「おじさん、お願いがあるんだ。俺をおじさんの使い番にしてくんな」
 急に顔を変え擦り寄る子供。
「といっても、お前の体は誰かに所属しているだろう」
「いや、所属していないーよ」
 子供は軽々しく喋る。
「みてごらん。その証拠さ」
 子供は自分の右肩を見せた。右肩にあるはずの登録番号が削り取られている。
「登録番号がないのか。お前、はぐれロボットか」
「ああそうさ、土木建設専用事業団『いろは組』に捕まって、この有り様さ。今この東海道復旧工事に使われているのさ。どうせ、俺が消えたって、わかりゃしないさ」
「そういうことなら、人助け。いやロボット助けかもしれんのお。ついてくるがよい。小僧」
 かねてから、「いろは組」のやり方には不満を持っていた主水である。
「俺わいは、小僧ではない。細工師の知恵ってんだい」
「よしよし、わかった、知恵。こちらへ」
 レイモンの一行から少し離れて歩いているいわゆる遊軍の主水だった。
主水はゆっくりと木陰から騒がしい一群を、のぞき見た。
「ははん、おじさん、あの行列と一緒にいたくなかったね」
 図星である。
「いや、その、ちょっと、不都合があってな」
「不都合って何なのさ」するどく尋ねる知恵。 
どぎまぎする主水
「まあ、よいではないか」
「ふーん、まあよいことにしておこう。な」
 知恵にかるくいなされている。
続く続く20240531改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
15回
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16回
ロボサムライ駆ける
■第16回 早乙女主水、侍ロボに負けた西日本都市連合の使いロボ忍び群の前に、頭の花村が 現れ、怒りの念波を、彼らロボ忍びのリーダーであるロッカンに向けて放つ。

ロボサムライ駆ける■第16回■第三章 霊能師(5)


 急ぎ逃げ帰るロボ忍者の一団の前に。 黒い影が立っていた。
「お頭」一団の誰かが叫んでいた。
 逃げ来るロボ忍の前に一人の男が立ち塞がるように。怒っているのた。
 全員がおぞけを奮う。
 その男の前に立ち止まり、膝を屈する。
 やがて、その男がゆっきりと口を開く。
「お前たち、早乙女主水とかいう侍ロボットに負けて、しっぽを巻いて逃げてきよったか」 
怒りを含んだ声が、彼らの聴覚器に響く。
「お頭、申し訳ございません。あやつ思ったより、強く」
 先刻のリーダー格の男がしぶしぶしゃべった。かぶせるように、
「ええい、聞きとうない。主水など、たかが東京城の護衛ロボット。それに比して、我々はロボ忍、伝統ある特殊技能ロボットぞ。よいか、あやつ、今度会いし時、必ずや、血祭りにあげい」
 覆面で見えぬが頭と呼ばれた男の怒りは相当のものらしい。
「わかり申した」
 全員が口を揃える。
「それでじゃ、ロッカン」
 先頭の男に言う。
「はい、お頭」
「おまえは、負けた責任を取れい、死ねや」
「おまちください、今一度の機会をあたえてください。今度は……」
「ええい、くだらぬ言い訳など聞きとうないわい」
 その男が光りに包まれる。
「ぐえーっ」
 ロッカンは倒れていた。
「よいか、みせしめじゃ」
「わ…わかりもうした」
 ロボ忍の体が、小刻みに震えている。
 残りの全員が恐れていた。声は小さいが、唱和していた。
「ところで、お頭はどちらへ行かれます」
 ようやく、一人が尋ねた。
「水野さまよりの密命じゃ。依頼されて東京城へな」
「東京城でございますか」
 奇異な感じがした。
「そうじゃ、まあ、見ておれ、わしの腕をな。お前たちは、落合レイモンの一行を見張りながら、西日本の首都にかえれ」
ロボ忍者群は、花村とロッカンの死体を残して走り去った。
(頭もむごいのう)
 これが、彼らの思いであった。
続く20240531改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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